「原子力映画解体」のためのメモ:『イエロー・ケーキ』

先週日曜日、東京大学駒場キャンパスで、ドイツ学会主催のイベント「原子力映画解体」に、斉藤勝司さん、渋谷哲也先生とともに登壇しました。ドイツのドキュメンタリー映画『イエロー・ケーキ』の上映回に合わせて、さまざまな「原子力映画」を紹介し、議論するというイベントで、金田浩紀さんをはじめとする配信チームにUst中継もしていただきました。


Ustアーカイブ
http://www.ustream.tv/recorded/39576818


togetter
http://togetter.com/li/573884


このイベントのために「メモ」を用意したのですが、当日はチラ見することも禁止されました(笑)。まあ、過去のブログエントリーやツイートを編集しただけのものですが。

これから数日かけて、少しずつそのメモを晒していきます。まずは『イエロー・ケーキ』から…。


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■ イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘 2010 ドイツ http://p.tl/oNT2


(2011年12月1日のブログを編集)


僕は偶然にも、同じドイツの監督が取った原子力映画である『アンダー・コントロール』を観た日に『イエロー・ケーキ』を観ました。しかしこちらは、抑制的な『アンダー・コントロール』とは異なり、「脱原発」あるいは「反原発」的なメッセージを明確に含む作品です。
「イエロー・ケーキ」というのは天然ウランを精製して得られる黄色い粉のことです。カメラは、ドイツ、ナミビア、オーストラリア、カナダのウラン鉱山を追います。旧東ドイツのヴィスムートというウラン鉱山では、かつての労働者たちに健康被害が出ているといいます(しかし、後で議論するように、具体的なデータが示されないのが残念です)。
どの鉱山でも、燃料となるウランを抽出した後に残る、放射性物質を含む汚泥が厄介になっているようです。それを捨てていたある湖は、生態系が破壊されているらしいのだが、もう少し正確なことを知りたいところです。
映画によれば、ナミビアでは、ウラン鉱山が現地の経済をよくも悪くも支えています。オーストラリアでは、アボリジニやそれに強力する環境NGOのウラン鉱山開発への抵抗が描かれます。一方、カナダでは、アレヴァなど原子力企業の鉱山で働くことを誇りに思っている地元住民の声も紹介されます。
このあたりは開沼博『「フクシマ」論』(青土社)などを連想せずにはいられませんでした。つまり日本における原子力発電所の立地が「国内植民地」的であることと非常によくにた構造で、ウラン採掘もまた、文字通り植民地的になされているということです。この件については、この映画を評価していいと思います。


「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか

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