インフルエンザ

 東大医科研の研究者が、ヒトに感染しやすくなる変異を見つけたようです。

〔略〕インフルエンザウイルスの表面には、人間の細胞に取り付く役割を担う「ヘマグルチニン(HA)」というトゲの形をしたたんぱく質がある。研究チームは複数の新型ウイルスを分析した結果、一部のウイルスのHAに変異が生じているのを確認できたという。
 河岡教授によると、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)のHAからも同じ変異が見つかっており、この変異が起きると、ウイルスが人間の細胞にくっつきやすくなる性質を獲得した可能性があるという。(無署名(読売新聞)「新型インフル一部変異、感染力強まる?…東大医科研らが確認」、『読売新聞』2009年6月15日10時52分)

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090615-OYT1T00151.htm


新型インフルウイルス、実は細長いインゲン形
http://www.asahi.com/science/update/0615/TKY200906150017.html

感染力増すウイルス変異か 新型インフルで東大報告
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009061401000469.html


 中国で分離された株にも見つかったとか。

〔略〕ウイルスに詳しい河岡義裕・東大医科学研究所教授によると、インフルエンザウイルスのPB2という遺伝子が作るたんぱく質は、感染した相手の体内での増殖能力を左右する。たんぱく質アミノ酸がつながってできている。新型インフルのPB2では、627番目のアミノ酸グルタミン酸だが、上海のウイルスはヒト型のウイルスと同じリジンになっていた。
 グルタミン酸のウイルスは37度前後でしか効率よく増えないが、リジンは33〜37度で効率よく増える。人の鼻の中やのどなど「上気道」は約33度、気管支や肺など「下気道」は約37度という条件に合うという。(大岩ゆり「新型インフル、ヒト型に変異発見 増殖しやすく? 上海」、『朝日新聞』2009年6月20日5時33分)

http://www.asahi.com/national/update/0620/TKY200906190468.html


新型インフル、人体内で急速増殖能力
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090620-OYT8T00255.htm

中国で発見の新型インフル、重症化しやすい可能性 東大
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090620AT1G1903S19062009.html


 冬に入りつつある南半球では、当然のことながら、じわりじわりと感染が拡大しているようです。「騒ぎすぎ」という声もありますが、今回の流行を、H5N1など強毒性のウイルスがヒト-ヒト感染を起こしたときにそなえ(エジプトではH5N1の感染報告が相次いでいるそうです)、かつ、いわゆる季節性インフルエンザに対しても適切に対応するための教訓にすればよいかと思います。09.6.22


エジプト:鳥インフル感染拡大 困難な防疫の徹底
http://mainichi.jp/select/world/news/20090622ddm012030175000c.html


追記;
 JCcastでは、新型インフルエンザによる「経済的影響」も議論になりましたが、少なくとも2つの試算がなされたようです。

兵庫・大阪では今回の感染ですでに208億円の損失が出たと見積もっている。(「新型インフル、企業損失試算2000億円 休校で親欠勤」、『朝日新聞』2009年6月13日9時2分)
http://www.asahi.com/special/09015/TKY200906130035.html

兵庫県は109億3000万円、大阪府は70億6000万円の損失と試算した。(石塚孝志「新型インフルエンザ:休校時、親も休むと……」、『毎日新聞』2009年6月2日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090602ddm041040140000c.html

 もし1人でも死者が出ていたら、こうした試算は不謹慎なものになったかもしれません……って、過去形で書いてしまいましたが、日本のインフルエンザ・シーズンはこれから数カ月後ですね。