『憐れみムマシカ』

 渋谷のアップリンクで『憐れみムマシカ』という映画の試写を観る。
 上映に先立ってあいさつした監督によれば、東北で実際にあった事件を映画的に脚色して作品化したものだという。
 ある地方で選挙に敗れた元議員が、町長の依頼を受けて、「未確認生物」を捏造して、町おこしを企てようとするのが、やがて騒動は彼の家族や街の人々を巻き込んで……というアイディアは悪くない。数年前に観た、タイトルを思い出せない映画を思い出す。19世紀のイギリスの片田舎で、ある姉妹が妖精を写真に撮影することに成功したと話題になる。話はロンドンにも伝わり、コナン・ドイルまで村にやってくる。しかし、少しずつ姉妹の行ったトリックが明らかになってくる……というあらすじだったと思う。信じること、信じないことについて、考えさせられる映画だった。タイトルを思い出せないのが惜しい。あまり話題にならなかったが、去年観た『曲がれ!スプーン』も、同じような印象を残す佳作だ。
『憐れみムマシカ』もそれらと同じねらいの作品なのかな、と思ったのだが……あまり面白くなかった。どうやらコメディらしいのだが、まったく笑えなかった。説得力のない物語展開、魅力のない台詞、深みのない演技、安っぽい道具。ようするにカネがないのだろう。確かに低予算でもスタッフや役者の才能や努力によって、いい映画をつくることは、原理的には可能だ。しかし限度はある。カネがなければ、スタッフや役者がどんなに才能豊かで、努力を惜しまない人であっても、それらは引き出されない。
 不況はエンタテインメント業界をも確実に蝕んでいる。10.6.3


追伸;
 妖精を撮った姉妹についての映画は、『フェアリーテイル』だと思われます。