本が続々と届く

 アマゾンやそのマーケットプレイスで注文した本が続々と届く。反射的に注文してしまったCDも(苦笑)。
 僕の部屋の本棚はすべて満杯で、床にも本が積み重ねられている。ゴミ屋敷に近い。本の山が少し大きくなったところで、いまさら気にもならない。
 ある研究会、というか勉強会でホッブスの『リヴァイアサン』の一部、アーレントの『全体主義の起源』の一部、フーコーの講義録『社会は防衛しなければならない』を読むことになっている。『リヴァイアサン』と『全体主義の起源』は、研究会で輪読するのはその一部だが、文脈を捉えておくためには、全体を少なくとも一度は通読する必要があるだろう。フーコーの講義録も同様で、全13巻すべてとは言わないまでも、前後の巻には目を通しておく必要があるだろう。
 そしてそれぞれの原著も。
 僕は、『リヴァイアサン』は「世界の名著」版を持っているのだが、研究会では岩波文庫版を使うので、当該の巻を買った(「世界の名著」で第8章まで読んだところで岩波文庫版が届いた。残りは古本屋などで少しずつ買うつもり)。当然ながら訳注などがかなり異なるようだ。

世界の名著 (28) ホッブズ (中公バックス)

世界の名著 (28) ホッブズ (中公バックス)

リヴァイアサン〈1〉 (岩波文庫)

リヴァイアサン〈1〉 (岩波文庫)

 原著のテキストは幸いにもプロジェクト・グーテンベルグなどにアップされている。


Leviathan by Thomas Hobbes
http://www.gutenberg.org/ebooks/3207


全体主義の起源』は、恥ずかしながら所有していなかったので、3巻とも購入した。

全体主義の起原 2 ――帝国主義

全体主義の起原 2 ――帝国主義

 原著は明学の図書館にあるようなので借りてみよう(幸いにも今月末から明学で非常勤をすることになっているので、教員証を得られ、学生と同様の利用資格が得られるはずである)。
『社会は防衛しなければならない』と、それ以外の講義録数冊は持っている。 原著は明学の図書館にあるようだが、フランス語の勉強のために、思い切って原著を買うべきかもしれない。
 輪読対象のテキストを、翻訳と原著、それぞれで熟読する必要があるのは言うまでもないが、副読本として、何に目を通す必要があるだろうか。思いつくままにあげてみよう。
 アーレント(またはアレント)は『人間の条件』で、しばしば『リヴァイアサン』に言及している。
人間の条件 (ちくま学芸文庫)

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

 稲葉振一郎先生の『「資本」論』は、ホッブスを含む社会契約論でしばしば言及される「自然状態」から議論を開始している。
「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

 稲葉先生の『ナウシカ解読』と加藤秀一先生の『〈個〉」からはじめる生命論』は、『全体主義の起源』の同じ部分を引用している。
ナウシカ解読―ユートピアの臨界

ナウシカ解読―ユートピアの臨界

〈個〉からはじめる生命論 (NHKブックス)

〈個〉からはじめる生命論 (NHKブックス)

『社会は防衛しなければならない』は、よく知られている通り、同じ著者の『性の歴史』、とくにその第1巻『知への意志』と関係が深い。
知への意志 (性の歴史)

知への意志 (性の歴史)

 フーコーは『知への意志』で生-権力の特徴を、あまりにも有名な「死の中に廃棄する」というフレーズで表現しているが、講義録では「死ぬに任せる」「死に曝す」となっている。
 この件については、市野川容孝さんの論文「生-権力再論」が必読だろう。
現代思想2007年9月号 特集=社会の貧困/貧困の社会

現代思想2007年9月号 特集=社会の貧困/貧困の社会

 なお僕は博士論文で、「死ぬに任せる」「死に曝す」という比較的わかりやすい表現が、なぜ、「死の中に廃棄する」というやや文学的な表現になったのかわからない、と書いたが、このあたりの微妙な力点の差異については、酒井隆史氏が『自由論』で書いている。
自由論―現在性の系譜学

自由論―現在性の系譜学

 そのことは、僕は同書を既読であったにもかかわらず失念していて、『バイオエシックスの構築へ』の、小松美彦さんの巻頭論文を読んで思い出した。
メタバイオエシックスの構築へ―生命倫理を問いなおす

メタバイオエシックスの構築へ―生命倫理を問いなおす

 そして『リヴァイアサン』は文学にも影響を与えている。ポール・オースターは、そのものずばり『リヴァアサン』という小説を書いているし、川端裕人感染症と疫学をテーマにした小説『エピデミック』で、『リヴァイアサン』に言及している。
リヴァイアサン (新潮文庫)

リヴァイアサン (新潮文庫)

エピデミック

エピデミック

 ……こういう輪読会形式の研究会に参加できる機会は今後減るだろう。無駄にしたくない。