近況(『画皮』、『歌えマチグヮー』など)

昨日は、映画の試写を2本も見てしまった。まずは午後、いつものテアトル京橋試写室で、ゴードン・チャン監督『画皮 あやかしの恋』という作品の試写を観る。ヴィッキー・チャオほか中華圏のスターが勢揃いの時代劇。
人間の心臓を食べ続けなければならない「狐の妖魔」が人間の女の姿で、人間の男性(将軍)に恋をし、その妻や兄貴分の男性らも巻き込んで行く。妻は彼女を「妖魔」であると見抜くが、彼女は手強く、将軍の正妻の座をねらって…というのが主なあらすじ。物語の中心は、妖魔と将軍、その妻という、いわゆる三角関係の恋愛であるが、実際にはもう2つほどの三角関係が描かれる。そこにSFXと剣劇アクションが加わる。
妖怪などが人間と恋にする、または恋に落ちる、という話の映画はいくつかあるように思われる。最近だと、まだ見ていないが、細田守監督の新作『おおかみこどもも雨と雪』がそんな話のはず。『画皮』は、中国の怪奇談集『聊斎志異』にある短編をベースにし、中国のトップスターが出ていることもあって、中華圏では大ヒットし、続編までつくられているとか。全体として荒唐無稽のようにも感じられ、悪役だけが命を落とすというエンディングには落胆したが、人を愛することをめぐる、ある種の責任のようなことについて考えさせられた作品とはいえる。


渋谷に移動して、relations.デジタル試写室で、新田義貴監督『歌えマチグヮー』という作品を試写を観る。こちらはドキュメンタリー作品。
NHK第三世界や沖縄などを取材してきた映像ジャーナリスト(いまは独立)が、沖縄は那覇にある「栄町市場」で、音楽を通して市場を盛り上げようとする、元気な人々を描く。地方都市を舞台にした映画といえば、劇映画、ドキュメンタリーを問わず、疲弊し、落ち込んでいく街とその人々を描く、と相場は決まっているようにも思う。この映画では主に、ラップに取り組むおばさんたちを主役に据えていることから、『サウダーヂ』(富田克也監督)あたりを思い出した。というか、途中まで、この映画は“裏サウダーヂ”じゃないかな、と思いながら観ていた。というのは、途中、この市場の再開発の影響で、シャッターを下ろした店が増えたり、店が終わった後にアルバイトに出かける男性の姿が描かれたりしたからだ。その思い込みは、最後に覆される(が、具体的には書かないことにしよう)。観終わったときの印象は、『サウダーヂ』や『海炭市叙景』とはずいぶん違う。もちろん、この映画では描かれなかったこともあるのだろう。栄町市場の元気な人々の様子は、あくまでも、消え行くものとして描かれているにすぎないのかもしれない。それでも、ま、いまんところはいいんじゃね、と思える佳作。なお栄町市場の公式ホームページはこちら http://t.co/eEuYaMAg 。イラストは、松本大洋っぽい? いつか、“ロケ地巡礼”したいね。


2つの試写を観る間に、渋谷の東急ハンズで、最も小さいサイズの付箋と、書籍用厚紙封筒を購入した。どちらも、普通の規模の文房具店では売られていないもの。少し前までは、オフィスデポで買っていたが、いつのまにかオフィスデポは実店舗を閉めてしまったようで、結局、東急ハンズで買うことになった。みなさんはプロ用文具をどこで購入しているのだろう? やっぱりアスクルとか? 僕はやっぱり実物を手にしてから買いたいのですが…。


ところで、昨晩はある事情でいつもと違う条件で就寝したためか、ずっと夢を見続けていたような感じだった。夢はご存知の通り多くはすぐに記憶から過ぎ去るので、完全に忘れてしまうまでに書き留めておこう。といっても、書きにくい。あえていえば、世界の人々が、多様性(個性を大事に!)と一体感(みんなで元気よく!)という、相反する2つの傾向を同時に求め続けたために、その矛盾がどんどん膨らむことによって、人はみないくつかあるカテゴリーのどれかに入れられ、そのなかで無個性化し、最終的にはそのカテゴリーも崩壊し、世界が終わる(終わりそうになる?)という、きわめて形而学的な黙示録みたいな物語。夢というよりは、何か映画のようなものを観ていた感じであり、黙示録とはいっても、パソコンで模式図を動画化したもののようにも思えた。おそらく現実世界で、原発をめぐる論争をながめ続けていることが影響しているのだろう。あと映画ばかり観ていることも。まあ、そもぞも映画は夢みたいなものだしね…。