幹細胞の未来

 幹細胞といえば、気になるのはオバマ政権の動向です。幹細胞関連の研究所が集中しているカリフォルニアでは、緊張感が増しているようです。
 少し前のものですが、『サンフランシスコ・クロニクル』が社説で幹細胞研究への予算支出の期待を表明しています。ご参考までに。09.2.5

社説 幹細胞の未来


 オバマ大統領が、その前任者ジョージ・W・ブッシュの政策を過去に追いやり----さらば言論統制、拷問、気候変動の軽視----歓迎すべき全力疾走を続けているように、私たちは、カリフォルニアにとって特別の関心がある1つの運命について立ち止まりたい。先週、食品医薬品局は、ジェロン社からの申請を認可した。同社はメンロパークに本拠を構えるバイテク企業で、胚性幹細胞を試験する臨床試験を開始する。
 この新しい決定は、幹細胞研究者や治療法を必死に待っている人々にとって、すばらしい兆候である。まだオバマはブッシュの幹細胞研究への制限をすべて撤回しておらず、このFDAの行動は、連邦政府が即座に多くのカネをそれに投資するだろうということを意味しはしないが、このことは、アメリカ合州国がついに前進することを意味する。しかしそれは、カリフォルニア再生医療研究所(CIRM)に挑戦を突きつける。同研究所は、カリフォルニアの有権者が2004年に認めた、300万ドルもの公債を使うよう形成された、カリフォルニアに本拠を構える幹細胞研究所である。ではいま、連邦政府は、幹細胞の問題を取り上げる用意をしているのか、そのカネすべてで同研究に何をさせるのか。
 望まれないことは、カネを返すことである。州の悲惨な経済状況にもかかわらず。有権者らはそのカネを認めたのだから、CIRMがそれを使うことを止めるメカニズムはたいしてない。
 とは言っても、CIRMのメイン機能は、カリフォルニアを、幹細胞研究所のためのジョブセンターおよびリサーチ・ハブに位置づけることであるようだ。(経済学の研究は、新しい産業の新しい種が芽生えるのは、産業全体のハブが成長する傾向がある場所である、と示してきた。)そして彼らがそのミッションや予算の目的を再調整するのならば、CIRMは、連邦政府がそうなるよう、幹細胞研究の未来にとって重要になりえない理由は存在しない。
 幸いにもCIRMはすでに、その未来について考え始めている。「私たちは異なることをすることについて議論してきました」とCIRMの最高コミュニケーション責任者ドン・ギボンズDon Gibbonsは言う。「たとえば、国立衛生研究所は、基礎研究に予算支出する傾向があります。移行研究ではなく。そして後者は、製品を市場化するために必要とされるものなのです。だから今月と来月、私たちは、私たちの予算を研究に再配分すべきかどうかについて話す予定です。その結果、私たちが幹細胞を治療や患者へとより素早く動かせるように」
 ギボンズは、同研究所が「幹細胞の非治療的利用」により予算支出することも検討している、と付け加えた。それはたとえば薬剤開発など大きな展望を見せている。「たとえばヴァイオックスVioxxは、もし企業が毒性試験に幹細胞を使うことができたならば、市場に出なかったでしょう」
 私たちは、CIRMが時代に応じて変化の準備をしていることを見て勇気づけられる。そして私たちは同研究所を、民間企業とのさらなるパートナーシップを形成するというカリフォルニアの有権者の寛大さを活用するよう励ます。そして近いうちのいつか、連邦政府とも。カリフォルニアは、バイオテクノロジー分野でのリーダーを待つ必要がある。(粥川準二仮訳)(Unsigned(San Francisco Chronicle, Editorials) "A future for stem cells", San Francisco Chronicle, January 30, 2009)
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2009/01/29/EDTI15JLPK.DTL

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