NIHの幹細胞ガイドライン草稿(続き)

 以下、先日の続きです。

ワシントン(AP) バラク・オバマ大統領が、納税者から予算を得ている胚性幹細胞研究についての制限を緩和したとき、どれだけの科学者らがそれをできるのか、という大きな疑問が浮上した。金曜日、政府は答えた。彼らは、不妊クリニックの胚から集めた細胞を使わなくてはならない、さもなくは捨てられるであろう胚から、と。
 国立衛生研究所によって公表されたガイドライン草案は、議会で広く支持されているルールを反映している。たとえば、ただ実験のために作出された胚に由来する細胞など、より論争的な供給源を排除している。
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 この制限は、より広いバラエティの細胞を使いたいと望む研究者たちを失望させるだろう。しかし、それはまた、おそらく数百ものさらなる幹細胞株が政府に予算支出される研究で使えるようになることを意味する。
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 先月、オバマはその制限を解除し、その分野を拡大した。しかし彼はNIHに、現在、どの細胞株が政府の予算支出にふさわしいのかを決める倫理ガイドラインを準備するよう任せた。
 連邦法は、胚をつくったり壊したりすることに納税者のカネを使うことを禁じている。ここでの未解決な問題は、最初に民間のカネを使って作出された細胞で研究することのルールである。
 多くの科学者は、ただ科学のためにつくられた胚に由来する幹細胞を使うことを認めるガイドラインを望んでいた。おそらく、クローン技術さえ使って。クローン技術はレシピアントとなる者のために、幹細胞を遺伝的にカスタマイズしうる。
 しかしNIHはそうではなく、不妊クリニックに残ったものにもともと由来する幹細胞を使う研究に、新しい助成金を制限することを提案した。カップルが必要としなくなり、それゆえしばしば捨てられることになる余剰胚extra embryo、である。
 これは、先の議会によって可決されたのだが、ジョージ・W・ブッシュ大統領によって署名されなかった法制度と一致する。
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 このガイドラインはまた、もともとの胚を提供する女性またはカップルに適切なインフォームド・コンセントをもたらすよう、要求している。そのようなドナーには、ほかの選択肢もある。たとえば胚を、ほかの不妊女性に提供するなど。すべては説明されなければならない。また、提供は自発的でなければならない。科学者からのプレッシャーなく。
 こうした提供行為は現在、スタンダードであるが、それらは数年前のことではない。ミシガンのモリソンは、ブッシュの認可した細胞株のうち一部は、新しい基準には合致しないだろう、と言う。それはゆゆしき疑問を提示する。彼は言う。そうした古い細胞株にもとづく研究は続けられるのか。
 金曜日のガイドラインはまた、ヒト胚性幹細胞を使う、ある種の研究をはっきりと禁止する。たとえば、それらをサルの胚、あるいはほかの霊長類の胚と混ぜ合わせることである。
 昨年、NIHは、胚性幹細胞を使う研究におよそ8800万ドルを予算支出した、とキングトンは言う。新しい政策の下で、NIHがさらにどれだけを使うことになるかは不明確である。
 NIHは1カ月、このガイドラインについてのパブリック・コメントを受け付け、7月の初めに最終ルールを発行するだろう。(ローラン・ニアガード「胚性幹細胞の研究に予算支出するアメリカUS to fund research with some embryonic stem cells」、AP通信、2009年4月17日付、粥川準二仮訳)
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5gFHmBW9Smi-UVlVKl5j9c7WGeVRQD97KHCPO0

 ようするに、日本でいう「余剰胚」から得られたES細胞を使う研究にのみ、連邦予算を使うことを認める、ということでしょう。ちなみに日本語の「余剰胚」にあたる英単語には、「surplus embryo」、「spare embryo」、「extra embryo」と3種類ぐらいあります。
「連邦法は、胚をつくったり壊したりすることに納税者のカネを使うことを禁じている」とあるのは、「ディッキー・ウィッカー条項」のことでしょう。これがある限り、余剰胚からES細胞を樹立すること、そのものに連邦予算を使うことはできないはずです。つまり、このガイドライン草案が認めたのは、民間の予算を使って余剰胚から得られた、既存のES細胞を使う研究に連邦予算を使うこと。
 おそらく、民主党はこの条項を解除する法案を提出するでしょう。まだまだ荒れそうですね。09.4.27


追記;
はてな」への入力、なぜか英語を含ませると、切れてしまって、うまく表示できないようです。タグとして認識されてしまうのだろうか。以前は何の問題もなかったのに……。