幹細胞、指針その1

 紹介するのが遅れてしまったのですが、5月19日、厚労省が幹細胞の臨床指針の策定を開始したとのことです。
 

万能細胞、臨床応用指針作り着手 厚労省委が初会合
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090520AT1G1903S19052009.html


厚労省委」というのは……「厚生科学審議会科学技術部会第1回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」のことのようですね。まだ配付資料や議事録がアップされていませんが、現行の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」を見直すことになるようです。
 この現行の指針ですが、「ヒト幹細胞」は、

(1) ヒト幹細胞 ヒトから採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞
であって、多分化能を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれ
に類する能力を有することが推定されるもの及びこれらに由来する細胞のうち、
別に厚生労働省健康局長が定める細則(以下「細則」という。)に規定する細
胞をいう。ただし、ヒトES細胞及びこれに由来する細胞を除く。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/iryousaisei01/pdf/01.pdf

 と定義され、いまのところES細胞が除外されていることはすぐにわかります。
 しかし、普通に読めば、iPS細胞は含まれると解釈できるのではないでしょうか。
 また、

ただし、次のいずれかに該当するものは、この指針の対象としない。
? 診断又は治療のみを目的とした医療行為
<細則>
?に規定する医療行為は、安全性及び有効性が確立されており、一般的に行われている医療行
為を指す。
? 胎児(死胎を含む。)から採取されたヒト幹細胞を用いる臨床研究

 とあるように、EG細胞など中絶胎児に由来する幹細胞も除外されていることがわかります。
 ただし、指針から除外されているということは、善意(?)で解釈すれば、いまのところ認められていないとみなせそうですが、悪意(?)で解釈すれば、除外されているということは規制されてもいないともみなせそうです。
 難しいところですね。改定される指針は、おそらくNAS(国立科学アカデミー)の研究ガイドラインや国際幹細胞研究学会の臨床ガイドラインなどを踏まえたものになるでしょう。
 アメリカでは、ジェロン社が申請していたES細胞を使って脊髄損傷の治療を試みる臨床試験FDAの認可を得ています。そろそろ始まっているかもしれません。イギリスでは、やはりES細胞を使って視覚障害を治療する臨床試験ロンドン大学のチームが計画していて、ファイザーが支援するということです。
 日本の関係者もあせっているのかもしれません。しかしながら、ことは人がかかわることですから、あせることなく慎重に進めてほしいものです。