幹細胞をめぐる争いの10年

 ごぶさたしています(こちらでは)。
 本日は○○の前哨戦ともいえる△△でした。苦しかった……。
 非常勤の講義で使っている年表を少し改変し、それをレジュメに組み込んだのですが、こちらにコピーしておきます。
 ご参考までに。

幹細胞をめぐる争いの10年

<1951年>
2月1日 ヘンリエッタ・ラックス、月経の不調のため、ジョンズホプキンズ大学病院を訪れる
2月9日 ラックスの子宮頸部から採取した腫瘍細胞がジョージ・ゲイの研究室に送られ、ゲイはそれが急激に増えることを観察
10月4日 ラックス、死亡
ジョージ・ゲイ、テレビ番組に出演し、ラックスの増え続ける腫瘍細胞を「HeLa細胞」と呼ぶ
<1975年>
?月?日 ラックス家の人々がほんの偶然、HeLa細胞の存在を知る
<1981年>
7月9日  マーチン・エバンス、マウスのES細胞樹立を報告
<1997年>
2月27日 イアン・ウィルムット体細胞クローン哺乳類個体「ドリー」誕生を報告
<1998年>
11月6日 ジェームズ・トムソン、ヒトES細胞の樹立を報告
ジョン・ギアハート、ES細胞の拒絶反応回避の手段としてクローン技術(体細胞核移植)との組み合わせを提案
11月10日 ギアハート、ヒトEG細胞を報告
〔このころから日本のマスコミなどで「万能細胞」という言葉が使われ始める。〕
<2001年>
8月9日 米ブッシュ大統領(当時)、この日までに樹立されたES細胞株にのみ連邦予算の使用を認めると「大統領命令」で決定
〔このころから英語圏のマスコミなどで「幹細胞戦争stem cell wars」という言葉が使われ始める。〕
<2002年>
6月20日 キャサリン・ヴァーフェイルら、マウスの骨髄から多能性幹細胞の樹立成功を報告
<2004年>
2月12日 ファン・ウソク、ヒトクローン胚からのES細胞樹立成功を報告(第1報)
3月8日 ジョセフィン・ジョンソン「クローンの背後にいる女性」
5月6日 『ネイチャー』、女性研究員の卵子提供疑惑を指摘
6月23日 生命倫理専門調査会(第35回)、ヒトクローン胚作成容認の方針を決定
8月13日 『サイエンス』誌上で、韓国の生命倫理学者とファンが論争
<2005年>
〔このころから「幹細胞治療stem cell therapy/treatment」を提供すると称する「幹細クリニックstem cell clinic」が登場し始める。いわゆる「幹細胞ツーリズムstem cell tourism」。〕
5月19日 ファン・ウソク、患者の体細胞からつくったヒトクローン胚からのES細胞樹立を報告(第2報)
11月6日 韓国の警察、「DNAバンク」を摘発
11月12日 ジェラルド・シャッテン、ファンとの決別を表明
11月22日 MBC「PD手帳」、ファンらの卵子入手をめぐる問題を提起
<2006年>
1月10日 ソウル大学調査委員会、最終報告書で、ファンは2005年の論文のデータすべてを偽造したと結論
8月25日 山中伸弥ら、マウスでのiPS細胞の樹立成功を報告
8月26日 中辻憲夫、自分たちはクローン胚研究を当面着手しないと発言
<2007年>
2月15日 『ニューサイエンティスト』誌、ヴァーフェイルらの論文に使われている写真が別の論文にも使われていることを指摘
ヴァーフェイルら、『ネイチャー』などに、自分たちの論文の内容は信頼されるべきではない、との書簡を送付
10月8日 マーチン・エバンスらのノーベル賞受賞が決定
10月11日 山中を含む4人の研究者、「iPS細胞研究における新しい進展はヒト胚性幹細胞〔ES細胞〕の必要性を不要にしない」と声明
11月14日 ショウクラット・ミタリポフら、霊長類のクローン胚からES細胞樹立成功を報告
11月16日 イアン・ウィルムット、ヒトクローン胚研究からの撤退を表明
11月21日 山中らとトムソンら、ヒトiPS細胞の樹立成功を同時に報告
ブッシュ米大統領(当時)、「倫理的な幹細胞ethical stem cell」としてiPS細胞を歓迎
<2008年>
11月4日 米大統領選挙で、ES細胞研究拡大を支持するバラク・オバマ民主党候補が勝利
12月3日 国際幹細胞研究学会、「幹細胞の臨床移行のためのガイドライン」と「幹細胞治療の患者ハンドブック」を発行
<2009年>
1月20日 バラク・オバマ民主党候補が米大統領に就任
1月23日 米FDA(食品医薬品局)、世界で初めてES細胞による臨床研究を認可
2月17日 イスラエルの研究者、ロシアで幹細胞治療を受けた少年に腫瘍が発生したことを報告
3月9日 オバマ米大統領、連邦予算を使うことのできるES細胞株を拡大することを認める「大統領命令」に署名
7月7日 米NIH(国立衛生研究所)、幹細胞研究のガイドラインを発行