『トイレット』、『フェアウェル』、『ウルフマン』

 1日に3本も映画を観てしまう。
 僕のところには映画の試写状がよく届く。一時期に比べたら少なくなったが、また最近、増えてきたようだ。今日はそのうち2本が同じ会場(テアトル京橋)でかかることを知ったので、スケジュールを無理して調整してみた次第。
 まず、『トイレット』。いわずと知れた、荻上直子の新作。これまでの3本と同じく、もたいまさこが出演。荻上の作品は、明らかに最初からもたいまさこが演じることを前提につくられているのだが、今回はカナダが舞台。超個性的なキャラクターたちが1つの場所でやや難解な行動を繰り広げるという荻上ワールドはあいかわらずで、それこそが彼女の作家性なのだろう。出演者も含めて。しかし、わからない人には、わからない作品かもしれない。そうそう、DNA鑑定も出てきた。
 2本目は『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』。冷戦中、ソ連の諜報関係者が在ソのフランス人を通じて機密情報を西側に流し続けたという、現実にあったらしい事件をもとにした社会派作品。どこまでが史実で、どこまでが創作なのかは僕にはわからないが、2人の人間的エピソードも豊富に描かれていたのがよかった。ミッテランレーガンゴルバチョフといった政治家も登場。地味な作品ではあるが、秀逸。
 地元に戻って、シネコンのサービスデイを利用して、『ウルフマン』を観る。リメイクだが、1940年代のオリジナルを観た記憶がないので、僕にとってはオリジナルと同じ……なのだが、ジャック・ニコルソンの『ウルフ』も含めて、狼男が登場する映画はいくつか観ているはず。あまり話題になっていないので、CGによる特撮のハッタリだけの作品なのかなと思ったがそうではなく、結構面白かった。これまでの狼男映画と同じく、「性欲」「精神疾患」「感染症」という、狼男がかもしだすメタファーが全編に満ちていたのはもちろん、シェイクスピア、“切り裂きジャック”(を担当した捜査官)、ストーンヘンジなど、舞台である19世紀イギリスらしい要素もちりばめられ、当時の精神医学・精神分析も描かれる。フロイト風の父と子の葛藤・対決は、アメリカン・ニューシネマを彷彿させなくもない。デル・トロとホプキンスの演技もなかなか。特撮やアクションはやや禁欲的だったが、これぐらいがちょうどいいだろう。
 そのまま『グリーン・ゾーン』を観ようかとも思ったのだが、明日、講義なのでやめておいた。10.5.14