“赤い”街/Miaou

 御茶の水は医療の街であり、ロックの街でもある。そして“赤い”街だ。サウスポーの街といってもいい。JRの駅前では、朝でも夕方でも、ほぼ毎日のように政党や労働組合学生運動団体がビラまきをしている。
 夕方、僕がどうしても関心を持たざるを得ない問題について、ある人々が主張していた。それに気をとられていた僕の様子を見たのだろう、カメラを首から下げた若い女性が『○○○○』の名刺を見せながら近づいてきた。『○○○○』らしからぬ、萌え系キャラ。だから、ではなくて(強調)、僕にとって切実な内容だったので彼女の取材を断る理由はなく、数分間質問に答える。記事の役に立てばいいのだが……。
 もうひとつのロックの街である渋谷に移動。以前取材を受けたことのあるCINRAというウェブ媒体をつくっている人たちが定期的に開催しているらしいexPOP!!!というイベントをのぞく。偶然、Miaouが出演することを知ったからだ。無料(ドリンク代のみ)ということもあって、若者だらけの場所には抵抗があったのだが、思い切って行くことにした。全部で5アーティストが演奏したのだが、Miaou以外に、OVUMを聴けたことが収穫だった。静寂と轟音、アルペジオとトリル、デジタルディレイとディトーション、エレキギターに付けるカポ、変拍子……終了後のBGMがtoeだったのはご愛敬。
 Miaouはラストだった。彼らの音楽を、和製アルバムリーフ……と言ったら失礼だろうか。僕としては高く評価しているつもりである。秀逸。演奏時間が短すぎて物足りなかったぐらいだ。
 小室やつんくのせいで、日本のポピュラー音楽は幼稚化した、という人がいて、僕もあるていど賛同する。しかしその一方で、それなりにより成熟(進化?)した音楽をつくり始めている(若い)人々がいることを忘れてはならない。僕がポストロックを聴き始めたとき、それはわずかな音楽通が聴くジャンルでしかなかった。その評判は主にインターネットを通じて広がったと思う。いまもマイナーであるには違いないが、TSUTAYAにはポストロックのコーナーができているし、toeの音楽はTVコマーシャル(北野武が出ているポカリスウェットの「砂漠編」)に使われているようになった。感慨深い。10.5.28