『瞳の奧の秘密』

 仕事が早めに終わったので、シャンテシネで『瞳の奧の秘密』を観る。マイレージがたまっていたので、無料で観ることができたのだが、1800円出しても惜しくない作品だった。
 舞台はアルゼンチン。ハリウッド映画ではなく、アルゼンチン映画なので、登場人物はみなスペイン語を話す。当然といえば当然だが(ちなみに上映前、トルストイの伝記的映画の予告編を見たのだが、みな英語をしゃべっていた)。
 裁判所で働き、定年した男が、25年前に経験した事件を小説に書こうと決意する。その過程で、事件の真相が浮かびあがるのだが、同時に、男が25年間心の内に秘めていた思いも明かされる。
 実際に起きた事件をもとにしているのか、あるいは小説を原作としているのかな、と思ったのだが、とくにそういうことではなく、映画オリジナルの作品のようだ。
 僕は不勉強なことにこの監督のことをよく知らない。俳優たちは、南米系、スペイン系の映画でよく観る人たち(残念ながら名前を覚えられない)。
 非常に丁寧につくられている。台詞は1つひとつよく練られているし、タイプライター、ドアといった小道具の使われ方も気が利いている。秀逸としか言いようのない作品……だが、ネット上ではあまりレビューされていないようだ。意外。
 ふつうに映画を観ていると、どうしてもアメリカ製と日本製の作品ばかりになってしまいがちだが、映画は世界中でつくられているという当然の事実を思い出させてくれる逸品である。