『トロン:レガシー』

 夜、たまっていたマイレージを使って、『トロン:レガシー』を観る。鑑賞料金はタダだったのだが、3D料金として400円とられた。3Dの映画を観るのはこれで何回目か忘れたが、前回よりも100円上がったようだ。
 周知の通り、映画に初めてコンピュータ・グラフィックスを本格的に導入したことで知られる『トロン』の続編である。ネタ切れに困ったハリウッドは、30年近く前の作品にも手を付け始めた……なんて意地の悪いことはいわないことにしよう。前作『トロン』は、いわゆるサイバースペースではないが、現実世界とは別に存在するコンピュータ世界(電子の世界?)を舞台にした、という意味では、ウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』に始まるサイバーパンク・ムーブメントの先駆け的作品でもある。『トロン』がなければ、『ニューロマンサー』も『攻殻機動隊』も『マトリックス』も『サマーウォーズ』もなかったはずだ……なんていうのは過大評価か。
 僕は例によって、「予習」と称して、借りたDVDで『トロン』を観ておいた。たぶん20数年ぶりにである。俺、何やっているんだろう……それはともかくとして、『トロン:レガシー』は、前作を観ていたら「おッ」と思うシーンもありつつ、別に観てなくてもたぶん問題ないようにつくられていた。ビジネスモデルとしては当然である。
 CGで表現されたコンピュータ世界は美しく、アクションはまあまあだった。コンピュータ・プログラムが自我を持ち、人間たちのコントロールを逸脱する、というのは既視感がかなりある。
トロン:レガシー』だけを観ていたら、あまりいい印象はないだろう。上述したようなサイバーパンク作品を超えている部分はあまりない。偉大なのは、インターネットなどまったく普及していなかった時代につくられた前作である。その前作の続編であるなら、たいていのことは大目に見られる。
 たぶんCGで再現したのであろう、すごく若いジェフ・ブリッジスと、おっさんになったジェフ・ブリッジスの共演(?)は面白かった。
 ところで、サイバーパンクの元祖中の元祖、『ニューロマンサー』の映画化はどうなったのだろう。大手制作会社による大作としての企画がボツになり、インディーズ系の会社がつくるという噂が流れてからすでに数年経つ。ま、気長に待つことにしよう。