MOGWAI「An Experience with MOGWAI「Hardcore Will Never Die, But

 JR恵比寿駅からリキッドルームに向かうとき、歩道橋を歩いたのだが、曲がり角で、ビルの窓辺に立つダース・ヴェーダーと目が合った。

 リキッド・ルームで、MOGWAIの来日公演を観た。いや正確にいえば、HMVで販売されたライブチケット+CD+Tシャツのセット「An Experience with MOGWAI - Hardcore Will Never Die, But You Will」の一部としてのライブを観た。CDとTシャツは昨日、佐川急便で届いたようだが、僕はあいにく外出していて受け取れなかった。今回のライブは、基本的には新譜の曲をやるということは知っていた。
 というわけで、僕は新譜を聴くことなく、予習なしでライブを観た。別にかまわないし、僕以外にもいるだろう。ちなみにMOGWAIをライブで観るのは、2年ぐらい前に続き、二度目である。チケット番号は181番。前から3列目ぐらいに陣取ることができた。もちろんスタンディングである。会場は予想通り、若い人ばかりだが、僕のようなおっさんもちらほらと。
 ワンマンだと思っていたら、オープニング・アクトがあった。「にせんねんもんだい(nisennenmondai)」という女の子3人のバンドだったのだが、いわゆるガールズバンドでインストというのは珍しいかもしれない。ループなど駆使し、ワンコードでがんがんとインプロビゼーション展開するスタイルは、烏賀陽弘道さんがベースを弾くバンド、シャーマンズや、前のMOGWAIのツアーでオープニング・アクトを務めたマルチ・ミュージシャン、REMEMBER REMEMBERを彷彿とさせた。
 そしれMOGWAIの演奏が始まった。当然のことながら、僕は初めて聴く曲ばかりだったのだが、“白いノイズ”はあいからず、圧倒的な迫力だった。以前に比べると、アップテンポの曲、短めの曲が多くなったような気がする。ボーカル曲も少しだけあった。
 今回面白いと思ったのが、メンバーが演奏する楽器を次々と変えたことである。もちろん、各人マルチプレイヤーであろうが、確か前回のツアーでは、バリー・バーンズがギターとキーボードの両方を弾いた以外は、固定されていたと記憶している。しかし今日のライブでは、曲によっては、ドミニクがギターやキーボードを弾いたり、ジョンがキーボードを弾いたり、スチュワートがベースを弾いたりした。
 ある曲では、ドミニクはベースにカポを付けて弾いていた。エレキギターでもカポを使うことは、ポストロックではすでに珍しくないが、ベースにカポを付けるのは初めて見た。
 新譜の曲を一通り演奏し終わると、スチュワートが言った。「古い曲をプレイしていいかい?」。「Christmas Steps」、「Killing All the Flies」、「Mogwai Fear Satan」が演奏され、メンバーはいちどステージを去った。そしてアンコールでは、「2 Rights Make 1 Wrong」と「Badcat」が演奏された。予想通り、新譜以外の曲もちゃんと聴くことができた。
 そういえば、数カ月前に観たCoccoも、新譜の曲中心のミニライブ、と告知していたのに、結局、古い曲も含めて2時間ぐらい歌った。
 それと同じ。アーティストは基本的に、ファンを裏切ることを好まない。
 終了後、2階のホールでセットリストを書いた紙が配られた。ライブの写真をゲットできるサービスもあったようだ。MOGWAIの気前のよさはあいかわらずである。
 ライブは普通、カメラ撮影が禁止されるものだが、終了後は解禁されるらしく、みんな機材を一生懸命撮っていた。僕もバリーのエフェクターを撮ってみた。

 今月はライブの予定があと2つある。元ちとせの「冬のハイヌミカゼ」ツアーと、Godspeed You! Black EmperorやENVY、BORISが出演するフェス的なイベント。今日MOGWAIを観た人の中には、後者を観る人も多いだろう。そういえば会場にはENVYをTシャツを着た人がいたし、僕の左斜め後ろの人たちはGY!BEについてしゃべっていた。
 それにしても、1カ月にライブ3つとは……ぜいたくかもしれない。学位論文の仕上げに追われていた、去年のいまごろとは大違いである。もちろん、いい意味で。たぶんね。少しだけ。
 今回のライブのタイトルは、おそらくニール・ヤングの「マイ・マイ、ヘイ・ヘイ」の「ロックンロールは死なない」という歌詞から取ったのだろう。「ハードコアは死なない。でもアンタは死ぬだろう」。そうだね、僕もあなたも、いつかは死ぬ。でも重要なのは、それはいまじゃない、ってことだ。