『キック・アス』

 今日は映画の日。仕事が早く終わったので、夜、有楽町のヒューマントラストシネマで、『キック・アス』を観る。ネット上には、すでに好意的なレビューがあふれているが、僕も楽しませてもらった。傑作といっていいかもしれない。
 原作はアメコミらしい。しかし単なるスーパーヒーローものではない。スーパーヒーローにあこがれるオタク少年が事件にまきこまれ、ほんとうのスーパーヒーローとかかわりながら、自分自身もスーパーヒーロー的になり、同時に大人へと成長していく。
 台詞やナレーションにはアメコミやその映画化作品の名前が頻出する。それらへのオマージュなのだろう。
 アメコミ原作のスーパーヒーローものというと、親子連れでも観られるように、またテレビで9時台に放映できるように、バイオレンスを少し抑えてつくられることが多いが、まったくそういう気配がなかったのがとてもいい。
 とくに「ヒット・ガール」という、わずか11歳の女の子のスーパーヒーローが、銃や刃物をぶんぶんふりまわしてギャングたちを次々とやっつける、というのは、アメコミ映画史上でも前代未聞ではなかろうか。その父親もまた、スーパーヒーロー(ちょっとバットマンに似ている)で、元警察官、現アメコミ作家(?)である。その彼を演じているのがアメコミ好きで知られるニコラス・ケイジ、というのは笑えた。
 アクションもユーモアも文句なし。音楽もなかなかカッコよかった。この手の映画には不可欠の「復讐」という要素もちゃんとあった。学校や地域という閉鎖社会へのアイロニーが効いていたのもいい。YouTubeMySpaceという現代的な小道具が組み込まれていたことも評価できる。
 映画の日以外に観ても、たぶんお得感を感じただろう。『ウォッチメン』と並んで、“メタ・スーパーヒーローもの”として、映画史に残るかもしれない。