『チャイナ・シンドローム』

諸事情で、『チャイナ・シンドローム』をDVDで観る。お気づきの通り、僕はある事情で “原子力映画” をまとめて観ているのだが、これが最も有名な作品かもしれない。1979年の作品。発表とほぼ同時期にスリーマイル島事故が起きた。この偶然はウルリヒ・ベックが『危険社会』を発表したのとほぼ同時期にチェルノブイリ事故が起きたことと似ている…って考えすぎか。
よく知られた作品なのだが、僕はずっと昔テレビで観たような記憶があるような気もするし、ないような気もする。それで3.11以降、観たいとずっと思っていたのだが、近所のTSUTAYAにはない。隣町のTSUTAYAにもなかったので、自転車で行ける範囲内にあるもう一店舗に行こうかと思っていたら、先週、いつも行くいちばん近所のTSUTAYAが、映画通オススメとか何とかいうコーナーに大量入荷した。で、さっそく借りてきて観てみた次第。
主人公の女性ニュースキャスターは原子力発電所を取材する。すると偶然トラブルが起きる。地震のように原子力発電所内部が揺れるのだが、このシーンは当然ながら、3.11を連想せずにはいられなかった。技術者たちはそのトラブルに必死に退所する。その場所は、撮影を禁止されていたのだが、カメラマンは密かに撮影していた。キャスターらはそれをスクープとして放映しようとするのだが、テレビ局の上層部はそれを許さない。主人公たちは苛立つ。そして原子力規制委員会の査察が入る。カメラマンはフィルムをテレビ局から盗み出し、原子力の専門家に見せ、事故の深刻さがわかる。発電所の技術者のなかにも、事故の原因に疑問を持つものがいた。そして事件が起きる…というのがおおまかなあらすじ。
技術者は発電所の問題を探る中で、ある配管のX線写真が焼き回しされていることに気づく。これは現在、生物・医学学系分野で、細胞などのデジタル写真がフォトショップで加工されることによって、論文捏造事件が頻発しているのを連想させた。現実世界の原発でも、不正が頻発していることは周知の通り。イギリスの科学雑誌『ニューサイエンティスト』が「日本における原子力の隠蔽の事故の記録」http://t.co/bxxYoQB なんて記事を配信したこともあるくらいである。この映画はそんな不正に満ちた原発の実情を予言していたのかもしれない。
しかし、不正は不正であり、原発そのもの是非とは関係ないという意見もあるかもしれない。それも一理ある。この映画に出てくるような良心的な原発技術者もきっといるはずだという希望も、僕は捨てないでおこう。