『女と銃と荒野の麺屋』

昨日の午後、京橋のテアトル試写室で、『女と銃と荒野の麺屋』という映画の試写を観る。監督はもうすでに中国の巨匠といってもいいチャン・イーモウで、本作はなんと、コーエン兄弟のデビュー作『ブラッド・シンプル』のリメイク。この組み合わせは面白すぎる。しかもイーモウは舞台となる場所を中国に移すだけでなく、時代もまた数百年前に移している(正確な時代はわからないが、あまり気にはならない)。
物語の舞台は辺境の地にある麺屋。主人は従業員をこき使い、カネをためている。その妻は、従業員と不倫している。その妻はあるとき、行商人から銃を買う。妻の不倫を知った主人は、ある警察官に、妻と従業員を殺すよう依頼する。しかし警察官は……というように、物語の骨格は、“原作”である『ブラッド・シンプル』とほとんど変わらない。最後のバトルシーンでは、ほとんどまったく同じ描写もあって、それはそれなりに笑えた。あと、従業員麺をつくるシーンなど、本筋とは関係なく、本作で独自に撮られたシーンも面白い。
全編が黒いユーモアに満ちていることも、原作のスピリッツを引き継いでいるといっていいだろう。かといって、当然ながらオリエンタルな雰囲気も濃い。
いま映画の世界では、安易な続編とリメイクが少なくないが、これぐらい丁寧につくり込めば、いいものができるという手本になるかもしれない。しかし、そのことが興行成績に結びつくかどうかはまた別である。
コーエン兄弟といえば、僕はほとんどの作品を観ているはずだが、最も新しい『トゥルー・グリット』と、その前の『シリアスマン』を見逃している。どこかの名画座で、2本立てでやってくれるとありがたいのだが。