『TSUNAMI』

DVDで『TSUNAMI』を観る。『TSUNAMI』という映画は何本かあるが、これは2009年に韓国でつくられて、それなりにヒットした作品らしい。僕は初めて観た。
舞台は韓国のリゾート地ヘウンデ。台風で船が沈み、父を失った女性。彼女の父の死について負い目を持つ男。港町にショッピングセンターをつくろうとする男たち。地震津波を研究する男。その元妻と娘。生真面目な海上救助隊員と、彼に近づく気の強い女。そんな人々の日常が、韓国映画特有のユーモアで描かれる。僕が苦手なタイプの描写だ。
そこに地震と「メガ津波」と呼ばれる大規模な津波が押し寄せる。大きな波やそれに壊される街がみごとなコンピュータ・グラフィックスで描かれるのだが、ハリウッド映画を見慣れ、そして本物の津波とその破壊力を(メディアを通じてであれ)見たことのある目には、それほどの衝撃はない。
3.11直後、被災地にすぐに入った同業者が、津波は容赦ない、どんな虐殺でも、多少の人情によって生き残る者がいるが、自然災害にはそれがまったくない、と言っていたのが印象的だったが、この映画の津波はやや中途半端だ。確かに情け容赦なく、津波は人を襲うのだが、主役クラスの者はほとんど生き残り、観客の共感を得にくい者が死ぬ。そういうところは残念ながらフィクションの限界としかいいようがない。そういえば、僕は今度、フィクションの可能性について話す予定がある。それがメインテーマではないが。同じ『TSUNAMI』というタイトルであれば、先日観たイギリスのテレビ映画『TSUNAMI the aftermath』のほうがずっと心に響いた。あちらはタイが舞台で、徹頭徹尾外国人の視点からしか描かれないという欠点があったのだが、そちらのほうがいいと思えてしまったのは、演出技術の差であろう。残念。