『渚にて』

先日、『エンド・オブ・ザ・ワールド』というDVDを借りて観てみたら、ネビル・シュートの『渚にて』をテレビ映画化したものだったのだが、今回観たのは、SF映画史に残っているほうの『渚にて』。たぶん以前に観たことがある。VHSビデオでだろうか。
舞台は第三次世界大戦の後の世界。欧米が核兵器で滅び、オーストラリアだけが生き残っている。しかしそこにも放射能がじわじわとやってくる。男たちは潜水艦に乗って北半球に旅立つ。サンフランシスコは「死の町」になっていた。潜水艦はモールス信号を傍受し、その発信源を辿るのだが…。失望のなか、潜水艦はオーストラリアに帰還し、乗組員たちもその家族も、最期の時間をどのように過ごすのか決めることを強いられる。
エンド・オブ・ザ・ワールド』と似たシーンが多かったので、同作は『渚にて』に敬意を払ったのだろう。それにしても、戦争のシーンはなく、人々が病気で苦しむシーンも最低限に抑えられているのに、じわじわと押し寄せてくる恐怖感は、当時の演出技術の成果であろうか。それとも2011年にこれを観ているわれわれのほうの問題であろうか。放射線障害の描写がおかしいという意見もあるかもしれないが、それは映画に限らず、フィクションの役割をはき違えている者の見方であろう。