人体売買の合法化?

タイミングが悪いのですが、10月10日、イギリスのシンクタンク「ナフィールド・オン・バイオエシックス」が臓器や生殖細胞を含む人体パーツの提供者への支払いを認めるむねの報告書をまとめました。人体売買の合法化の提言ともみなせるもののようです。
以下、英語圏のメディアから抜粋しておきます。

臓器の見返りには何がいいですか? 臓器の需要は供給を上回り続けているので、提供する人々に見返りを与える倫理的な方法が取り入れられる必要がある、と、ロンドンの「ナフィールド・カウンシル・オン・バイオエシックスの新しい報告書は述べる。そのリストのトップは、死んだ後、臓器を提供されてもいいと同意する人の葬儀の支払いをする、というものだ。同評議会は、葬儀代の支払いの申し出によって、より多くの人が〔提供に同意の〕サインをすることを希望する、と述べている。(略)卵子の価格。医学研究のために卵子提供の不快さや健康への影響の可能性を被るであろう女性は、不妊治療のために卵子を提供するときの費用以上に支払われるべきである、と、報告書は結論づけている。第?相臨床試験の被験者はふつう、参加すれば数百ポンドを受け取る、と、報告書にかかわった人類学者マリリン・ストラサーンは言う。「研究目的の卵子提供は、ほかの誰かの治療を手助けするための提供とは違います。特定の人を手助けするわけではないのです。研究という“エクササイズ”の中に入るのです」と彼女は言う。提供を確かなものとするための登録制度が設立されるべきで、それは監視され、規制される(略)(「臓器ドナーの葬儀は無料で」、『ニューサイエンティスト』10月11日付)

http://www.newscientist.com/article/dn21037-organ-donors-should-get-free-funeral.html

未受精卵を研究者に提供する女性は支払われるべきである、と、イギリスの、影響力のある独立組織の新しい報告書は主張する。(略)ナフィールド・カウンシルの報告書は、研究のための卵子提供と、初期の臨床試験との類似点を指摘する。臨床試験では、医薬品やそのほかの治療法が、健康なボランティアで、安全性を試験される。そして被験者は通常、支払われる。自分たちがほかの女性の妊娠を手助けするだろうことを知っていて、卵子提供を申し出る女性とは異なり、その配偶子を科学者に渡す人は、その個人的な提供の直接的な利益についてそれほど確かではありえない。それゆえ卵子ドナーの愛他主義だけに依存することは不適切である、と報告書は書く。報告書は、研究のために卵子を提供する女性への支払いについて調査する予備計画を呼びかけている。(略)国際幹細胞研究学会とアメリカ生殖医療学会はどちらも、何らかのかたちでの卵子提供への報酬を支持している。(略)イギリスの「ヒトの受精および胚研究認可局」は、卵子精子のドナーへの支払いについて、独自の勧告を発表することを計画している。(「科学のために卵子を提供しなさい、支払われます、と新しい報告書」、『ネイチャー・ニュース・ブログ』10月10日)

http://blogs.nature.com/news/2011/10/nuffield_report.html

先週の卵子販売をプッシュするパブリティシティ〔ヒトクローン胚からの幹細胞樹立成功論文など〕は、〔ナフィールド・カウンシルの〕この報告書を予想していたのかもしれない。このことはこの問題を特集した『アメリ生命倫理ジャーナル』の先月号と噛み合わないようだ(『ネイチャー』の著者の1人〔マーク・ソウサー〕が参加しているが)。しかしながらナフィールドの小委員会は、そのプレスリリースでは、配偶子を軽視し、国営医療サービス(NHS)が臓器ドナーの葬儀代を支払うという提案に焦点をあてている。この報告書は、この問題の真剣な精査であり、注意深く読むに値する。この報告書は、イギリスは卵子精子のドナーの必要経費に上限(現在250ポンド、約400ドル)を定めているが、それを緩和し、収入の喪失を含む実費を認めることを示唆している。また、数を特定することなく、研究のために女性が卵子を提供するに支払いをすることを認め、そのような女性は「いま可能な限りの保護を得た被験者」(6.81)であると述べる。報告書は、詳細を述べることなく、予備計画の設立を提案する。(略)すでに階層化された卵子マーケットが存在する。地域と特徴、それぞれによって。研究者たちはたくさんの卵子を欲しがっており、基本的な健康以外、〔卵子〕供給者の表面的な身体的特徴について、不妊産業ほど気にしていないようだ。しかし、現金を必要としない女相続人が高い賃金を得られる、彼女の時間はそれほどの価値があるから、でも貧しい女性は最低賃金しか得られない、という考え方って何かおかしくはないか?(「卵子のためにもっと現金を」、『バイオポリティカルタイムズ』10月13日)

http://www.biopoliticaltimes.org/article.php?id=5894