『原子力戦争 Lost Love』

月曜日、メーガクでの講義の後、林衛さんからお借りしたDVDで『原子力戦争 Lost Love』を観る。そのために情報センターで「CPRMデッキ」を借り、教務部で空いている教室を使う許可をもらい、教員ラウンジで機材ボックスの鍵を借りた。小さめの教室を独占して、ポメラでメモをとりながら観た。
原作は田原総一郎、主演は原田芳雄。1978年の作品。これがなかなか面白かった。
東北のある浜辺で、男と女の心中死体が見つかる。背後には原子力発電所。新聞記者・野上はそこにスクープの匂いをかぎつける。その町に東京からチンピラ・坂田がやってきて、ある女を探す。その女こそ、浜辺で見つかった女・青葉望で、坂田は彼女のいわゆるヒモだった。望の心中を信じられない坂田は、野上、望の妹の翼、父、兄、そして望が心中した原子力技術者である山崎の妻・明日香、山崎と最後に会ったという労組の人物などとかかわりあい、徐々にこの町の影でうごめく巨大な力に気づいていく。労組の男は死に、坂田にも暴力がおよぶ。そして警察に逮捕される。坂田は何度も、この件にはかかわらず、東京に帰るよう警告される。そして関係を持った山崎の妻から、原子力発電所の事故にかかわる資料を入手し、それを野上に渡す。野上にも、取材をやめるよう圧力がかかる。坂田は明日香の行動に不審を抱き……というのが、『原子力戦争 Lost Love』の主なあらすじである。
望の兄は野上に、この町は漁師の町ではなくなり、いまでは税収の9割が原発になった、と言う。原発は彼の家族もばらばらにしてしまったらしい。そして彼らの愛憎劇の背後には国際レベルの原子力発電開発競争があることも明らかになってくる…。
なんだか懐かしい雰囲気の映画だ。『チャイナ・シンドローム』と『野生の証明』を合わせたような感じだ。(そういえば昨晩観た『ウィンターズ・ボーン』とも少し似ている。)
ロケ地は、ネットでは、福島第一原発という説と第二原発という説がある。途中、原田演じる坂田が原発の正門から敷地内に入ろうとすると、警備員は、坂田を注意するだけでなく、カメラに向かって「ここは撮影禁止です!」と警告する。つまりこのシーンだけ、マイケル・ムーア的なドキュメンタリー調になっている。偽ドキュメンタリー、やらせドキュメンタリー的でもある。そういえば、8月に林衛さんと女川原発の近くまで行ったとき、その裏門を撮影していたら、スピーカーから声が聞こえてきて、「ここは撮影禁止です」と注意されたこともあったっけ…。 http://t.co/oA6aE7Vv
原発の危険性だけでなく、政治経済的な問題も描かれていたところがよかった。これまで作品の存在自体を知らなかったことが恥ずかしいぐらいだ。