元ちとせ ワンマンライブ 〜永遠の調べ〜

夜、六本木にあるBillboard Live Tokyoという、僕にはまったく似合わない場所で、元ちとせの「ワンマンライブ 〜永遠の調べ〜」を観てきた。本当はチケットを入手した時点で、電話をかけて入場整理番号をゲットしておかなくてはいけなかったのだが、僕はうっかり忘れていたので現場で番号をもらった。それでも72番。なかなかいい席で堪能することができた。
僕はいつもライブでは、1曲目が何かを楽しみにするのだが……その前に、入場してきたメンバーにどぎもを抜かれた。それについては後で書こう。それぞれが誰かも気になるのだが、今回のバンド編成はわずか3人。ピアノ兼ハープ兼木琴兼ピアニカの人。ドラム兼カホン兼トランペットの人。そしてベース(エレキベース)の人。
ライブの1曲目で演奏される曲は、よくあるのはアルバムのオープニング曲だろう。実際、前回の「冬のハイヌミカゼ」では「サンゴ十五夜」(『ハイヌミカゼ』)だった。今回は…「凜とする」だった。『ハイヌミカゼ』のエンディング曲とは、まったく予想していなかった。
今回のツアーはあくまでもシングル「永遠の調べ」に合わせたものなので、このCD(マキシシングル)に入っている3曲と、あとはこれまでのシングル中心の選曲になるかな、と思っていたら、まったく違った。残念ながら現時点でセットリストがどこにも上がっていないので、正確には不明だが、シングル曲は「永遠の調べ」と「ワダツミの木」ぐらいだったと思う。ほかは「約束」「37.6」「オーロラの空から見つめている」「月齢17.4」「羊のドリー」「六花譚」といったように、いわゆるアルバム収録曲が中心で、何度も「この曲やるの?」と驚かされた。もちろんいい意味で。
「羊のドリー」は前回の「冬のハイヌミカゼ」でも演奏されたので、今回はないだろうと思っていた。毎年、大学の講義でクローン技術について話すとき、この曲を使っている者としてはとてもうれしい。
しかもどの曲もアレンジがまったくといっていいほど変えられていた。元ちとせの音楽には不可欠と思っていたアコースティック・ギターがなく(そもそもギターがない)、「永遠の調べ」以外の曲でも、ハープが前面に出ていたのが印象的だった。
そのほか知らない曲が1曲あったが、誰かのカバーかもしれない。アンコールは彼女自身の三味線弾き語りによる島唄だった。
僕が今回のライブでいちばん感動したのは、アンコール前のラストだった。
ライブが始まる直前、サプライズ曲としてあるといいなあと思って、「恐竜の描き方」「竜宮の使い」などをiPodで聴き直していたのだが、いちばん期待していたのが「六花譚」だった。『カッシーニ』の収録曲で、大好きな曲の1つだ。誰か忘れてしまったのだが、最近の日本人は慟哭を忘れている、元ちとせCoccoは慟哭を知る歌い手だ、というようなことを書いていた。僕もまったくその通りだと思う。3.11以降、とくにそう痛感している。烏賀陽弘道さんがどこかで、報道記者は泣きじゃくる被災者にマイクを向けよ、と書いていて、僕もそうあるべきだと思うが、もっといえば、3.11を書く者は自ら泣きじゃくりながら書けよ、と思うことがある(武田徹さんも似たことをどこかで書いていたはず)。

もいちど あなたの その手を握りしめたなら
愛おしくて 愛おしくて 泣いてしまう気がする
                「六花譚」

今度被災地に行くときは、カーステレオでこれをかけて、同行者とともに涙ぐみながら……そんなことで涙ぐむのは俺だけか。
最後にメンバー紹介があった。ピアノやハープを弾いていたのは、不勉強なことに僕が知らない人だったが、ドラムは予想通りASA-CHANG、そしてベースはクラムボンのミトだった。偶然にも、先日、クラムボンも観たばかりである。前述した通り、いずれの曲もレコーディングされているものとはひと味違ったバージョンにアレンジされ、素晴らしかったとしか言いようがない。
ところで今回のライブのタイトルは「冬のハイヌミカゼ」ではない。ということは、来年わりと早い時期に、デビュー10年を記念する「冬ハイ」もあるのだろう。
では、そのときまで生きていることにしよう。



追伸:
Billboard Live Tokyoでは「永遠の調べ」という名前のノンアルコール・カクテルを飲んだ。もちろんこのライブのオリジナル。元ちとせの故郷、奄美大島は台風の被害を受けたばかりで、彼女は募金を求めた。ほんの気持ちだけ寄付。

追伸その2:
SNSのコミュニティでセットリストが上がっていった。僕の記憶よりは正確だろう。

凛とする
青のレクイエム
約束
月齢17.4
オーロラの空から見つめている
誰もいない海(大木 康子、トワ・エ・モワのカヴァー)
37.6
月を盗む
羊のドリー
ワダツミの木
永遠の調べ
六花譚
くるだんど節(アンコール)

http://mixi.jp/view_event.pl?id=64062799&comment_count=31&comm_id=8363

追伸その3:
同じく某コミュニティによると、福岡伸一先生が会場にいたらしい!

永遠の調べ

永遠の調べ

カッシーニ(初回生産限定盤)(DVD付)

カッシーニ(初回生産限定盤)(DVD付)