『アンダー・コントロール』

午後、渋谷のシアターイメージフォーラムで『アンダー・コントロール』を観る。
ドイツが福島の事故を受けて脱原発を決断したことはよく知られているが、この映画はドイツの監督が、すでに始まっている廃炉、すなわち原発およびその関連施設の末路をカメラで追ったドキュメンタリーである。ナレーションも効果音も音楽もほとんどなく、カメラはドイツ各地の原子力関連施設を淡々と追う。インタビューも最低限しかない。その一方で、映像はきわめて美しい。いや、アート映画のような美しさではないが、原発というきわめて人工的で無骨なものを、構図や光の工夫で、美しく見せてしまうのは、アイロニカルかつ批評的な表現なのかもしれない。その頂点は、冷却塔が遊園地に転用されたカルカー高速増殖炉であろう(3.11後、いくつかのネットメディアが取り上げたことがあるはず)。
この映画は、「脱原発」を声高に主張しているわけではないが、原子力という厄介な代物を「管理下」に入れることの難しさや矛盾は十分に伝わってくる。惜しいのは、ナレーションなど説明をほとんど完全に排除してしまっているために、スクリーンの中で行われていることが何なのかいまひとつわかりにくいことだ。僕は恥ずかしながら、プログラムを読んで初めてわかったこともあった。なおプログラムに開沼博さんと武田徹さんが寄稿していることも、この映画のスタンスを表しているように思う。