『マイ・ウェイ 12,000キロの真実』

夜、いつものシネコンで『マイ・ウェイ 12,000キロの真実』を観る。
日本占領下の京城、すなわち現在のソウルで、ともに走ることが好きな日本の少年と朝鮮の少年が出会う。彼らはライバルとしてともに陸上選手となるのだが、ある不幸な事件が起きて、2人の人生は狂い始める。時代は彼らの運命を翻弄し、2人は日本、ソ連、ドイツの兵士として大戦に身を投じることになる。
舞台は京城から日ソ国境、シベリアの収容所、場所がはっきりしないが独ソ国境のどこか、そしてノルマンディーとめまぐるしく変わり、言語もそれに応じて各国語が飛び交う。戦闘シーンは、明らかに『プライベートライアン』以降のアメリカ映画を踏まえている。失礼ながら、韓国映画も、もちろん日本映画もだが、20年遅れでアメリカに追いついたのか、という印象を感じた。
しかし、物語のスケールが大きいわりに、少ししらけながら観てしまったのは、人間の描かれ方がやや浅く、展開の説得力が少し弱い、と思ったからだろう。韓国映画だから仕方ないといえば仕方ないのだが、前半、日本人はオダギリー・ジョー演じる主人公を含めて徹底的に醜く描かれる。冷酷な彼に対しても、韓国人の主人公は比較的寛大にふるまうのだが、その態度はやや不自然で説得力に欠ける。韓国人を日本人よりも美化している、という批判もありうるだろう。もっとも、主人公以外の韓国人登場人物のなかには、部分的に醜く描かれる者もいるのだが。物語が進むにつれて、日本人のほうの主人公も韓国人のライバルと助け合うようになるのだが、その変化もいまひとつ説得力がない。人が弾丸より早く動いたり、ライフルで戦闘機を撃ち落としたり、というのはご愛嬌だとしても、こうした物語やキャラクター上の説得力の弱さは、作品の世界がきわめて大きく、ハリウッド映画にも対抗できるものであるからこそ、惜しいとしか言いようがない。
それでも、それなりに退屈せずに最後まで観れたので、まあいいかな、とも思った。甘いかな。
ちなみにレビューなどによると、ノルマンディー上陸作戦で捕虜になったドイツ軍兵士のなかに、1人の東洋人がみつかったという実話からインスパイアされて、この映画の物語はつくられたという。興味深い。だったらなおのこと惜しい。