『アニマル・キングダム』

続いて、『アニマル・キングダム』を観る。
こちらの舞台はオーストラリア。主人公である無表情な少年はある日、母親を薬物の過剰摂取で亡くし、祖母に引き取られる。そこには母親の兄弟に当たる3人のおじたちがいたが、彼らはみな、強盗や麻薬などの犯罪で生計を立てていた。少年もいやおうなく彼らにまきこまれている。しかし彼らも喜んで犯罪をし続けているわけでなく、いつか破滅が訪れることにうすうす気づいている。
おじたちといっしょに仕事をしていた男は、おじの1人にこの稼業から足を洗うことをほのめかした直後、突然、前触れもなく警察に撃ち殺されてしまう。(オーストラリアの警察はそんなに横暴なのだろうか。)彼らは警察に報復を試みるが、もちろん警察もだまっているわけではない。警察の手は、未成年である少年にも伸びる。
そして、この手の犯罪映画ではある意味ではお約束なのだが、彼らのなかにも亀裂が入り始める。そして少年のガールフレンドまでその争いにまきこまれてしまう。
少年は異常な環境のなかに投げ込まれたことで、そのなかで大人になることを強いられる。もちろんこの映画のような世界で、大人になる、ということが何を意味するのかは、いうまでもないだろう。
映画の雰囲気は、犯罪を生業にする一族を描いているという意味では、昨年観た『ザ・タウン』や『ウィンターズ・ボーン』に似ている。とくに後者とは、まだ若い主人公が壮絶な経験を強いられるということも共通している。
ストーリー展開にやや不自然と感じられるところがないでもなかったが、退屈することなく最後まで観ることができた。基本的にはフィクションであるようだが、レビューなどによると、モデルとなった犯罪一家が存在するらしいから驚きだ。