『J・エドガー』

夜、いつものシネコンで『J・エドガー』を観る。いうまでもなく、イーストウッドとディカプリオがタッグを組んだ話題作中の話題作。しかも主人公はFBI初代長官エドガー・フーヴァー
映画では、回顧録を口述筆記させる年老いたフーヴァーと、司法省に勤め始めたころの若きフーヴァーが交互に描かれる。周知の通りフーヴァーは数十年長官に在任し、8人もの大統領に仕えた。
冒頭のシーンで、フーヴァーの執務室に飾られているジョン・デリンジャーデスマスクが写る。デリンジャーといえば、ジョニー・デップ主演、マイケル・マン監督の『パブリックエナミーズ』の主人公だが、イーストウッドはそれを意識したのだろうか?
若きフーヴァーはある日、司法省の女性(後に秘書になる人)をデートに誘い、国会図書館で、本を分類するカード・システムを考案したのは自分だと自慢げに話す。これは史実なのだろうか? 初めて知った。みんな忘れているかと思うが、昔はみんな、大きな図書館で資料を探すときには蔵書の情報をまとめたカード・システムを使ったものだが、あれはフーヴァーが発明したものだったのか…。
フーヴァーはその発想の延長で全国民を監視し、情報を集め、治安強化に役立てるシステムの構築に取り組む。それと同時にFBIの権限をどんどんと強めていく。また指紋など科学捜査を取り入れ、FBIのイメージを向上させていく。
彼に狙われたのはギャングや共産主義者だけでなく、周知の通り歴代大統領も含まれていた。しかしこの映画の主題は、そうした政治的なものではない。フーヴァーは同性愛者だったという、彼の内面が映画では中心的に描かれる。イーストウッドのような「男らしい」監督が、こうしたテーマに目を向けるのは、意外といえば意外だが、脚本は『ミルク』の人だと気づいて、なるほどと思った。)
たとえばオリバー・ストーンだったらストレートなアメリカ政治批判を前面に出すだろうが、それではあまりに予定調和になるというのが、映画会社サイドらの判断だったのだろう。
劇中に『パブリック・エナミー』というギャング映画が登場するのだが、マイケル・マンのと同名の映画が実在するのだろうか? ジョン・デリンジャーのほかにもロバート・ケネディリンドバーグシャーリー・テンプルニクソンなどが登場。それぞれが登場する映画と比較すると面白いかもしれない。