『ソハの地下水道』

午後、京橋テアトルで『ソハの地下水道』の試写を見る。監督はポーランドのアグニェシュカ・ホランド。キェシロフスキの「トリコロール」の青と白で共同脚本を手がけた人らしい。
すでに話題になっている通り、ナチス占領下のポーランドのある街で、こそ泥をすることもある下水道修理工が、地下水道に逃れたユダヤ人たちを、最初は金目当てでナチスから匿うのだが、やがて心を動かす、というのが主なあらすじ。
原作はノンフィクション、つまり実話だという(その邦訳も近く刊行)。『シンドラーのリスト』のような話だが、主人公の水道修理工ソハにはシンドラーのような高潔さがまったくないことが大きな違い。プレスキットによると、当初は英語での制作を予定されていたらしいのだが、最終的には、各登場人物が実際に使った言語で制作されている。解説によると、標準ポーランド語のほか、ポーランド語の方言、イディッシュ語ウクライナ語、ドイツ語、ロシア語が使われているとか。もちろん英語に統一するよりもリアリティがあっていいと思う。(しかし解説がなかったら判別できず、全部ポーランド語だと思っていたかもしれない。)現代は英語で『IN DARKNESS(暗闇の中で)』。邦題の『ソハの地下水道』は、アンジェイ・ワイダの『地下水道』にちなんだものだろう。実際、監督はワイダの指導を受けたこともあるらしい。
秀逸。アカデミー賞ノミネートというのも当然であろう。