『魔女と呼ばれた少女』、『食卓の肖像』

午前中、六本木シネマートで『魔女と呼ばれた少女』(キム・グエン監督)の試写を観る。
内乱に苦しむコンゴにて、1人の少女が反政府軍に拉致され、両親を殺すことを強いられ、そして兵士になる。彼女には亡霊が見えるらしく、その力によって生還したり、軍を勝利に導いたりして、ゲリラの中でも一目置かれる存在になる。やがて彼女は少年兵と恋に落ち、2人で軍から逃げるのだが…。
基本的にはフィクションであるが、入念な取材を重ねたうえで脚本が書かれた作品であることが推察される。子ども兵士というシリアスな問題が、アフリカという脱魔術化されていない土地で起きていることを静かに伝える神話的作品。



新橋に移動して、TCC試写室で、『食卓の肖像』(金子サトシ監督)の試写を観る。戦後最大の食品公害として知られる「カネミ油症」事件を追ったドキュメンタリー映画。『タリウム少女の毒殺日記』が話題の土屋豊監督の名前が「スーパーバイザー」としてクレジットされている。カネミ油症事件とは、ちょうど僕が生まれたころ、「カネミライスオイル」という食用油を口にした人たちにさまざまな健康被害を起こした事件。金子監督は、2000年から、カネミ油症被害者の人たちの聞き取りをし始め、2006年から撮影し、それをまとめたものがこの映画作品のようだ。
痛感したのは、この事件においても、人が翻弄されるのは「出産」「誕生」といった本来ならば喜びに満ちた出来事だということ。カネミ油症事件というと「黒い赤ちゃん」が有名だが、そのほかにも映画では、流産や死産に苦しんだ人、口唇口蓋裂の子どもとその母親がその心情を語っている。
貴重な記録だが、同時に、この事件からかいま見える「安全」とは、いったい何を意味するのだろう? この疑問は、フクシマ事故や出生前診断とも通じる。