今年観た映画ベスト3

ごぶさたしています。こちらでは…。
さて今年も観た映画ベスト3を書きます。
今年はおよそ100本の映画を劇場で観ました。毎年この時期にベスト3を書いていますが、年によっては「ベスト3」といってもその「分母」、つまり観た映画の総数が少なくて、自分で書いてて説得力が弱いと思ったこともありました。今年はまあまあでしょうか(それでもいくつか重要作を見逃しています)。
ということで、順不同で−−。


●『猿の惑星 新世紀(ライジング)』(マット・リーヴス監督)

この枠(?)にこの作品を挙げるか、それとも『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を挙げるか迷った。いわずとしれた『猿の惑星』シリーズのリブート版2作目である。前作でシーザーたち類人猿が人間社会に反旗を翻してから後、“猿インフルエンザ”の流行により人類がほぼ死滅した未来社会において、独自の文明を築きつつある猿たちとわずかに残った人間たちとの出会い、そして争いが描かれる。猿の側にも人間の側にも、いわゆるタカ派ハト派がおり、一瞬だが両者のハト派どうしによって共存の可能性が示されたのだが、しかし…。戦争というものはこうして引き起こされるのだなあ、と実感させる一作。アクション、特殊メイク、CDなども文句なし。リブートもの、リメイクもの、続編ものには、手抜きや安易さを感じることも少なくないが、その側面にもおいても1つの理想型・模範となるものであろう。


●『イーダ』(パヴェウ・パヴリコフスキ監督)

舞台は1960年代のポーランド修道院に暮らす1人の少女がある日、自分がユダヤ人であることを告げられ、自分の両親について知るため、判事をしているという叔母を訪ねる旅に出る。その過程で、ナチスにもソ連にも翻弄されてきたポーランドにとって、おそらくは最も知られたくない歴史的事実が徐々に浮かび上がる…。(このあたりの展開は、ポール・バーホーベンが祖国オランダの暗部を描いた『ブラックブック』を彷彿とさせる。)また、主人公の修道尼アンナ=イーダにも変化が訪れるのだが、彼女の最後の選択は少し意外にも思えるし、当然にも思える。要所要所で流れるジャズやモノクロの映像も印象的。


●『ホドロフスキーのDUNE』(フランク・パヴィッチ監督)

僕はホドロフスキーのファンではない。大学生のとき、ジョン・レノンなどが絶賛していると知って、『エル・トポ』などいくつかの作品をVHSで観たが、まったく理解できなかった。その後、『エル・トポ』のリマスター版がつくられたとき試写で観たが、とりあえず画面で何が展開されているのかだけを理解することができた。また、デヴィッド・リンチ監督の『デューン/砂の惑星』は好きでも嫌いでもないが、評判が悪いことは知っており、当初、ホドロフスキーが映画化しようとしていたことはどこかで読んだことがあった。本作は、その挫折したホドロフスキー版『DUNE』がいかにして企画され、進められ、そして挫折したかを、当事者たちへのインタビューをまじえて問い直したドキュメンタリー。挫折した企画のメイキング・ドキュメンタリーなんてそもそも成立するのかよ、と思いながら観てみたところ、ギーガーやメビウスミック・ジャガーピンク・フロイド、ダリ、オーソン・ウェルズなど、とんでもない人物たちの関与が次々と明らかにされ、そして、『DUNE』という企画そのものはつぶれてしまったものの、ホドロフスキーを中心に彼らが生み出したアイディアが、『エイリアン』や『スター・ウォーズ』にも大きく影響したことが描かれる。映画史ドキュメンタリー(?)の傑作であろう。


◯総評など

ベスト3に入れるかどうか、いちばん迷ったのは『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督)である。いくつか疑問点もあるものの、文句なしに面白い作品であったし、『2001年宇宙の旅』のフォロアー的映画としても素晴らしかったのだが、ほかに挙げるべき作品があったので、次点にとどめておく。

ドキュメンタリーでは、『大いなる沈黙へ』(フィリップ・グレーニング監督)、『リヴァイアサン』(ルーシャン・キャステーヌ=テイラーほか監督)、『聖者たちの食卓』(バレリー・ベルトーほか監督)のように、ナレーションはもちろん、インタビューさえほぼない、というスタイル−−フレデリック・ワイズマン的作風?−−でつくられた作品が目立ったような気がする。説明や台詞を使わなくても、伝わるものは伝わる、という命題は、劇映画によってもよい教訓になるのではないか。

よかったのは以上ですが、逆に悪かったのは…あまりいいたくありませんが、「裏切られた」という意味では、『トランセンデンス』、『LUCY』、『荒野はつらいよ』あたりでしょうか…。

すごくよかったわけでも、悪かったわけでもありませんが、『複製された男』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)は、初見で理解できなかったことが少し悔しかったです。

総じて、収穫の多い年だったように思います。来年もいい作品にめぐり合いたいものです。みなさん、よいお年を。