期待して/期待しすぎないで

 不覚にも自分では気付かず、yyj君の日記で知った記事。


「iPS期待しすぎないでノ再生まだ先」京大が専属広報


 これは難しい。大学が広報部を持ち、学内の研究者の成果を広報していくことなど、英語圏では普通らしく、そうした大学や企業のプレスリリースばかりを集めたニュースサイトまである。そうしたプレスリリースのスタイルは、新聞の、いわゆるストレートニュースとそっくりで、記者に“コピペ”を奨励しているようにさえ見える。
「広報」という行為の性格上、「期待しすぎないで」と発信することは、「期待して」と発信することよりも難しいかもしれない。
 後者については、すでにノウハウは蓄積されている。また、その行き過ぎによる弊害も広く指摘されてきた。たとえば製薬産業については、マーシャ・エンジェル著『ビッグ・ファーマ』(篠原出版新社)、レイ・モイニハンほか著『怖くて飲めない!』(ヴィレッジブックス)など、タバコ産業については、ASH著『悪魔のマーケティング』(日経BP)、など。ジョン・スタウバーほか著『リスキー・ビジネス』(角川書店)も印象的だった。
 問題は前者だ。「期待しすぎないで」と発信しつつ、少なくない研究費を使うことについて納税者を説得しなければならない。成功の前例はあるのだろうか。
 そして京大(やいわゆる先進国のトップクラス研究機関)がその難問に成功したとしても、英語ができる患者が検索エンジンに「stem cell therapy」や「stem cell treatment」と打ち込んだとき、画面上部や右側に浮かぶのは……問題はすでにグローバル化している。そういう議論は、次回のJCcast(粥川 vs yyj第2ラウンド?)でする予定(なのだが、僕の体調は大丈夫か(苦))。
 そういえば数年前、以前に取材したことのある某研究機関が、広報部門を強化するということで、プレスリリース制作の見積もりを僕に依頼してきたことがある。「そんなに人材不足なのかッ」と驚いた記憶があるのだが、僕がその依頼に対してどのように答えたのかは覚えていない。7/21/08

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リスキー・ビジネス

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