『ノルウェイの森』、『さくらんぼ 母ときた道』

 いろいろと書きたいことがあるのだが、諸事情のため短めに(でもないか)。
 今朝知ったニュースで驚いたのがこれ。すでにネットじゅうがざわめいているようだ。
村上春樹原作 『ノルウェイの森』 映画化決定
村上春樹の大ベストセラー「ノルウェイの森」映画化
原作ファンの賛否やいかに? 村上春樹の「ノルウェイの森」が遂に映画化!

 しかし、映画関係のウェブ媒体って……ま、いいか。
 春樹の作品は、まずデビュー作の『風の歌を聴け』が大森一樹監督で映画化されている。僕は大学生のとき、VHSのビデオを借りて観たはず。原作とはかなり異なっており、大森なりの解釈が活かされていた作品だった。しかし、春樹本人は気に入らなかったのだろうか、これ以降、彼はベストセラーを連発するのだが、それらはほとんど映画化されていない。
 その例外。いつのまにか、「100%の女の子」と「パン屋襲撃」が山川直人という監督によって短編映画になっていた。どちらも短編が原作である。僕はDVDを買って観た。あまり強い印象はない。
 そして数年前、やはり短編の『トニー滝谷』が市川準監督で映画化された。僕はユーロスペースで観た記憶があるが、悪い予想は当たってしまった。「解釈」がほとんどなされていなかったのだ。台詞のほとんどは原作のまま。まるで紙芝居を観ているようだった。失礼ながら、制作者たちは春樹の読者たちの目が怖かったのだろう。
 なお僕は、小説やマンガなどの原作がある映画を観るときには、必ずといっていいほど、原作との「距離」を気にしてしまうのだが、実は、映画としての出来、すばらしさと、原作との距離とのあいだには、ほとんど何も関係がない。原作に近くてつまらない映画もあれば、原作とはかけ離れていて面白い映画もある。
 さて、『ノルウェイの森』はいかがなものか。フランス在住、ベトナム出身の監督が、日本人キャストでつくるという。『夏至』は、僕も好きな作品だ。あまり期待しすぎると裏切られたときのダメージが大きいが、期待せずにはいられない。楽しみだね。
 映画の話題をもう1つ。
 今日の午後、所用で銀座に行ったついでに、東劇3階の試写室で、『さくらんぼ 母ときた道』という映画の試写を観てきた。
 これは大当たりだった。
 僕は知らなかったのだ、監督の挨拶まであった。映画の舞台は雲南省の奥地にある農村で、そこで使われている言語も少数民族の言葉なので、撮影には通訳を使ったという。出演者は、主演の女優以外は現地の素人。肝心のストーリーは、あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので最低限にしておこう。舞台は1980年代の貧しい農村、登場人物は知的障害を持つ女性と、その夫である足の不自由な男性、そしてそのあいだの娘……なのだが、実の娘ではない。中国政府の政策によって……と、これくらいにしておく。知的障害者身体障害者の夫婦、という設定だけで、日本では(ほかの国でも?)つくられにくい映画だと思う。監督によると、すでに中国では公開され、各地の映画祭にも出品されており、好評を得ているという。当然だろう。登場人物たちの生活の苦しさと、中国の農村の美しさの組み合わせがみごとに描かれていた。日本でも間違いなく話題になるだろう。7/31/08

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レキシントンの幽霊 (文春文庫)

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ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

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ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

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