韓国では、忘れられかけているあの人が……

 暑いですね。
 さっき気づいたニュース。翻訳がちょっとアレなのですが……。

黄禹錫氏のクローン研究、政府が「不承認」決定 世論は賛否両論

AUGUST 02, 2008 09:31

保健福祉家族部(福祉部)は1日、黄禹錫(ファン・ウソク)博士の人間体細胞の胚芽クローン研究を承認しないことを最終的に決めた。

福祉部は、「黄禹錫博士が責任研究者を務めているスアム生命工学研究院が提出した、「治療目的の体細胞の核移植技術を利用した人間の胚芽肝細胞の樹立に関する研究」の研究計画書を承認しないことを決めた」と明らかにした。〔後略〕

 そりゃあ、承認されないでしょう。第一に、提案者に大きな「前科」がありすぎます。第二に、iPS細胞(をはじめとする体性幹細胞)が登場したいま、クローニングで拒絶反応を軽減するという戦略(セラピューティック・クローニング)に、説得力はあまりありません。
 体性幹細胞の「自己(自家)移植」というのは、あくまでも再生医療の夢、理想型であって、現実には時間などの問題があるらしく、周知のとおり、いまのところ、いろいろな人に合わせられるよう、たくさんの「細胞株」を集めておく、という戦略がとられるようです。
 しかし山下祐司君によると、いま欧米で進行中の、体性幹細胞の臨床試験を見てみると、患者自身の骨髄を使う方法など、「自己移植」のものが意外と多いとのことです(JCcastもご視聴ください)。つまり、再生医療の夢は、正夢になるかもしれない、ということです。たぶん対象となる病気の種類などにもよるのでしょうが。
 山中氏など幹細胞研究のトップランナーらは口をそろえて、iPS細胞が登場しても、ES細胞研究の重要性が失われたわけではない、と述べています。その主張はそれなりに説得力があると思います。しかし、ES細胞ES細胞でも、クローン胚由来のES細胞はどうでしょう。実際、「ドリー」の作り手であるイアン・ウィルムットクローン胚研究からの撤退を表明しています。いま、クローン胚研究をしようと考えているのは、オレゴン大のグループなど、ごく少数です。100歩譲って、仮にそれを目指すとしても、動物実験の結果はまだまだ「成功」とは言いがたいものなので、人間での実験は早計でしょう。
     ※
「心脳問題」(朝日出版社)などで有名な山本貴光氏によると、先日紹介した、ニコラス・ローズの『生それ自体の政治』の一部が同氏によって翻訳されたとのことです。僕も、「bio-」という接頭語には、いつも迷います。どのように訳されたのか楽しみです。

現代思想2008年7月号 特集=万能細胞 人は再生できるか

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The Politics of Life Itself: Biomedicine, Power, and Subjectivity in the Twenty-first Century (In-formation)

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