疼痛、ダウン症、イグ・ノーベル賞

 疼痛止まらず……明日までによくなってくれんと困るんだが。
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(教員として)火曜日の講義にそなえてiPS細胞関連の原著論文やレビュー論文を読みつつ、(学生として)水曜日のゼミにそなえてレヴィ=ストロース『野生の思考』(みすず書房)を読む、というのはいかがなものか。
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 偶然発見したニュース。

イングランドで増えるダウン症 余命は延び成果も上げる
2008年09月16日配信 共同通信

 【ポーツマス16日PRN=共同JBN】遺伝子検査が一般的に利用できるようになったにもかかわらず、イングランドではダウン症で生まれる子どもが15年前よりはるかに増えていることを新たな分析が示している。
 現在ではダウン症の人はこれまで以上に多くなっている。より多くの努力の成果を上げより長く、より豊かに生きており、検査の倫理性に疑問を投げかけている。ダウン症でない子どもにとって検査にはリスクもある。この新たな分析は、検査がイングランドウェールズだけで毎年400人のダウン症でない子どもの死亡につながっていると推定している。〔後略〕

 数年前に放送されたNHKの番組では、イギリスでは出生前診断の普及によって、二分脊椎と呼ばれる先天的な障害を持って生まれる人が減り、そのため、それに対応できる医師まで減ってしまっている、と紹介されていた。そのため、出生前診断が普及しているイギリスでは、ダウン症児って減ってるんじゃないかなあ、と僕は勝手に想像していた。ところが……ということ。
 一昔前だったら、「環境汚染の影響だ!」とか拙速なことを言う人もいただろうか、いまは、そんなうかつな人はいないだろう。たぶんね。
 近代社会に一筋の光明が見えた、というのは僕の妄想か。
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 イグ・ノーベル賞。だんだんイグ・ノーベル賞らしくなくなっていませんかね。

「迷路の近道、菌でも探せる」中垣氏らにイグ・ノーベル賞

 ノーベル賞をもじって、ユーモアあふれる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が2日、米ハーバード大で行われ、単細胞生物の真正粘菌が迷路の最短経路を見つけることを発見した中垣俊之・北海道大准教授ら6人に、今年の「認知科学賞」が贈られた。AP通信が伝えた。
 中垣准教授らは、真正粘菌が迷路全体に広がった後、エサを迷路の入り口と出口に与える実験を行った。粘菌は、最短経路以外に広がっていた部分を次第に縮小し、最後は1本の管状になって両端でエサを食べる最も効率的な形になった。「脳も神経もない原始的生物でも、高度な情報処理機能をもつ」として8年前、英科学誌ネイチャーに発表した。(ワシントン、増満浩志)
(2008年10月3日11時08分 読売新聞)

 これって、すでに多くの批判を受けている「大脳中心主義(説)」への、さらなる批判の1つとなる知見ではなかろうか。バウリンガルの発明などとは次元が異なると思われ。
 次のも。

「コカ・コーラの避妊効果」研究にイグ・ノーベル化学賞

〔前略〕
また、高価な偽薬(プラセボ)ほど、安い偽薬よりも効果が高いことを確認した米デューク大学のダン・アリエリー行動経済学教授が、医学賞を受賞した。

同教授は体の70%以上をやけどして入院した3年間に、病院内の患者の行動を観察。やけどの痛みで夜に飛び起きる患者が、看護師から鎮痛剤を受けてすぐ眠る様子を何度となく見かけたが、看護師から注射は単なる生理食塩水だと聞かされ、偽薬とその効果に注目。

「何かを期待すれば、人間の脳はそれを実現させるよう働く」と述べ、価格が安い後発医薬品ジェネリック医薬品」も、名前と値段を変えれば高い効果が上がると主張している。

 これまた近代医学批判として、きわめて重要な知見であろう。痛みがとれるんだったら、プラセボだって歓迎だぞ、俺は。
 どうした、イグ・ノーベル賞、すごすぎるぞ。08.10.6

野生の思考

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