科学的根拠に基づく政策

 ほぼ終日、原稿。なかなかまとまりません。
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 アメリカでは、オバマ次期内閣の顔ぶれが揃ったようですね。

〔略〕科学技術政策の透明性を高める意味からも、意思決定に直接かかわる補佐官復活を求める声が科学界からあり、科学的根拠に基づく政策決定を公約にしているオバマ氏も復活の方針を示していた。〔略〕(無署名(朝日新聞)「オバマ政権、科学技術担当補佐官を復活 物理学者を指名」、『朝日新聞asahi.com)』2008年12月20日21時48分
http://www.asahi.com/international/update/1220/TKY200812200195.html

「科学的根拠に基づく政策」というのは「evidence-based policy」のことでしょうか。最近定着してきました言葉ですね。ようやく、というべきでしょうか。「政策policy」というのはもちろん科学政策だけでなく、広く政策一般を意味するはずです。
「証拠」とか「根拠」とかいえば、もう10日近く前のことですが、12日に警察庁が11月までの刑法犯のまとめを発表しましたね。各紙、「通り魔」を見出しに掲げていますが、いちばんまともなのは、『中日新聞』でしょうか。

〔略〕刑法犯の認知件数は2003年から連続して減少しており、昨年の殺人の認知件数も1199件で戦後最少を記録した。しかし、今年11月までの殺人の認知件数は1200件で、すでに前年1年間を上回り、前年同期比で83件(約7%)増。
 今年1−11月期の刑法犯認知件数は約167万5000件と前年同期比で8万7000件(約5%)減少。通年でも昨年を下回り、6年連続減少となる見通し。刑法犯に占める割合が最も多い「窃盗犯」は4・1%減の126万2670件で、事務所荒らしや出店荒らしなどが大きく減少している。刑法犯全体の検挙率は0・2ポイント減の32・0%。(無署名(中日新聞)「通り魔被害最悪42人 1−11月、刑法犯全体は減少」、『中日新聞(CHUNICHI Web)』2008年12月12日 朝刊
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008121202000099.html

 確かに土浦や秋葉原の事件は悲惨だったし、そのコピーキャットがいくつかあったことは事実ですが、全体として刑法犯が増え、したがって社会の危険性が増しているわけではない、ということを、この記事は淡々とまとめています。
 また、短期的な動きもそれはそれで重要で、たとえば『産経』は次のように書いています。

〔略〕また、65歳以上の高齢者による殺人(未遂を含む)が増加。「介護疲れ・看病疲れ」という動機で妻や夫を殺害するケースが大幅に増えており、介護問題の深刻さをうかがわせている。〔略〕刑法犯として逮捕されるなどした高齢者は今年11月までに4万5059人で、昨年を上回るペースで推移。罪名別では、暴行が1871人(昨年は1703人)で急増。万引も2万4917人と高水準で推移している。
 未遂を含む殺人は、158人(同110人)。このうち親族間の殺人が108人(同36人)。被害者が配偶者だったケースは61%を占めた。犯行動機では「介護・看病疲れ」とした高齢者が21人で、昨年(5人)を大幅に上回った。(無署名(産経新聞)「通り魔事件、最悪 1〜11月刑法犯認知 老老介護疲れ…殺人・未遂21人」、『産経新聞(産経ニュース)』2008年12月12日06:57
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081212/crm0812120701002-n1.htm

 まちがいなく重要な情報でしょう。
 僕は、「凶悪犯罪が増加している!」という人、「マスコミは犯罪増加を煽っている!」という人、どちらにも違和感を抱いています(後者のほうがマシだとは思いますが)。どちらも証拠、根拠、事実に基づいて議論を展開していないからです。他山の石としましょう。08.12.21