恐怖の恐怖

 午前中、いつものようにプールに行ったのだが、コーヒーを飲み過ぎたのだろうか、なんとなく吐き気がする。ウォーキングの時間を短くし、ストレッチと入浴はいつもと同じようにして帰室。吐き気はおさまったが、腰にやや痛みがある。少し天気が悪くなると、すぐこれだから、嫌になってしまう。でも、湿布を貼りたくなるほどではないのが幸い。
          ※
 はいはい、空気読みますよ。
 2004年の鳥インフルエンザ騒動のとき、同ウイルスの感染が確認された養鶏場の経営者夫婦が自殺したことは多くの人の心に深い傷を残していると思います。
 WHOの記録によると、「高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)」による死亡例数は、2003年から2009年までのあいだで、257人です。もちろん日本人はゼロです。つまり自殺した経営者夫婦はカウントされていません。
 
WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)感染確定症例数
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/case200900/case090423.html
 
 こうしたウイルス感染に起因しない「被害」はどのように考えるべきでしょうか。
 また、新型ばかりが注目されていますが、季節性のインフルエンザだって、あるいは通常の風邪だって、生存を脅かすことはありえます。すでに、

 新型インフルエンザへの警戒が強まる中、東京都内の病院で、発熱などの症状がある患者が診察を拒否される例が相次いでいることが分かった。都によると、2日朝〜4日朝だけで計63件に上る。新型への感染を恐れたためとみられるが、感染者が出た国への渡航歴などがない患者ばかりで、診察拒否は医師法違反の可能性がある。大学病院が拒否したケースもあり、過剰反応する医療機関の姿勢が問われそうだ。〔略〕(江畑佳明「新型インフル:東京の病院、過剰反応 発熱患者の診察拒否」、『毎日新聞』2009年5月5日 2時30分(最終更新 5月5日 13時41分))

http://mainichi.jp/select/science/news/20090505k0000m040115000c.html

 と伝えられていますが、受診が遅れることによって症状をこじらせてしまう可能性は否定できないでしょう。
 東京では、もともと病院の数が多く、「発熱外来」の設置も比較的早く設置が進んでいるので、大きな実害は出ていないのでしょうが、もともと病院の数が少なく、発熱外来の設置が遅れている(「医師不足」のため!)地域では、問題になりえます。もともとある「医師不足」問題、医療格差問題の延長もいえそうですが。これもインフルエンザそのものより怖い「社会的要因」ですね。
 それと関連して、先日何人かと議論していたとき、ある人が「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」という寺田寅彦の発言を教えてくれたのですが、正確な出典がわからない、とのことでした。
 少し気になっていたのですが、それが「小爆発二件」というエッセイであることが、今朝、偶然わかりました。『毎日新聞』の元村有希子氏のコラムで。


発信箱:正しく怖がる=元村有希子(科学環境部)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090502k0000m070135000c.html


 原典も青空文庫で読めます。

〔略〕ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。○○の○○○○に対するのでも△△の△△△△△に対するのでも、やはりそんな気がする。〔略〕「小爆発二件」

http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2507_13840.html

 な、なんですか、この伏せ字は……。
 それはともかく、いまでも通じる重要な指摘ですよね。
 ところで、誰かの発言が感染症のように(不謹慎?)人から人へと伝わって、すでに出典不明の逸話(X次情報?)のようになったものを、あたかも自分のオリジナルの意見であるかのように書いたり話したりする人がときどきいますが(言論のコピーキャット効果?)、せめて2次資料にまでは遡る努力が必要ではないでしょうか。あと出典の明記も。あくまでも自戒を込めて、ですが。
 それにしても、話題の豊富な人と話すと、注意や興味の幅が拡がるような気がします。
 僕も、ほかの人にそう思われるような人になりたいですね。09.5.5


追記;
 ほれみろ!

【香港5日共同】5日付の香港紙、星島日報によると、世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は3日、同紙のインタビューに応じ、メキシコでの新型インフルエンザ感染による死亡例について、現時点では大半が診察が遅れたケースであることが分かっていると話した。〔後略〕(無署名(共同通信)「死亡の大半診察遅れとWHO局長 新型インフルで香港紙取材に」、『共同通信』2009年5月5日付)

http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009050501000370.html