『THE ダイエット』と食べること

 昨日のことだが……。
 所用で都内に出たついでに、渋谷へ。
 少し時間が半端だったので、宇田川町界隈をぶらぶらしていると、いい匂いがする。開店前の沖縄料理を出す居酒屋----最近乱立していないか----のテラスの席で、若いスタッフたちが賄いとおぼしきごはんを食べていた。僕がそばを通りかかると、「こんにちは!」と元気な声であいさつされた。僕は会釈だけして通り過ぎる。
 くるりの「ワンダーフォーゲル」では、「ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって、こんなにもすれ違って、みんな歩いていく」という歌詞があったっけ。僕もあいさつが苦手になって久しい。
 アップリンクで観たのは、『THE ダイエット』という映画の試写。最近、タダの映画ばかり観ているな……ライターにとっての賄いみたいなもんか(苦笑)。
 それはともかく、同作品は、硬派の作品もあるオーストラリア在住の女性映画監督が自らのダイエット経験をそのまま記録したドキュメンタリーである。いわゆる「セルフ・ドキュメンタリー」、つまり被写体は監督自身。「コメディ・ドキュメンタリー」というキャッチコピーで宣伝されているので、モーガン・スパーロックの『スーパー・サイズ・ミー』のような作品かなと思って観てみたら……もちろんそういう要素もないわけではなかったが、直視できない、観ているとこちらが辛くなってしまうシーンも少なくなかった。コメディはコメディでも、自虐に近い。また、セルフ・ドキュメンタリーというスタイルをあえて取っているせいか、「肥満」という現象が社会的な、そして経済的で、政治的で、グローバルな問題であることはみごとにオミットされていた。だがその一方で、「肥満」もまた、社会的に構築されているものであることはみごとに描かれていた。食べることについて考えさせられる映画ではある。医療ライターとしての僕はこの作品を高く評価しないが、社会学徒としての僕はこの作品を高く評価する? そういえば、昨年観たCoccoのドキュメンタリーでも……。
 配給は例によってパンドラ
 どうでもいいことだが、この日の午前中、自炊に不可欠のあるものが届いた。数カ月前に故障したのだが、ようやく先日、新しいものを買ったのだ。帰室してから、ひさしぶりに、自室でまともなものをつくって食べる。
 本日は終日原稿。まだまだまとまらない。09.5.15



『THE ダイエット』
http://www.uplink.co.jp/thediet/