分断化された世界

 昨日のことだが……。
 鶴川から新百合ヶ丘までのあいだは立っていたのだが、僕から見て右下に座っていた女性は、「PCR関連製品……」とか書いてある資料を読んでいる。インフルエンザを勝機と見る関連メーカーの人であろうか。
 新百合ヶ丘から新宿までは座れた。
 電車内を見渡しても、本や雑誌や新聞を読んでいる人は少なく、みんなケータイの画面を眺めている、という光景はすでに見慣れている、が……そのなかでぽつぽつと例外が。
 僕の正面の白人男性は、「入省許可……」と書かれたカードのホルダーをぶらさげ、英語の雑誌を読んでいる。中央省庁に出入りする外国人とは、どんな職業なのだろう。僕の左側の女性(日本人)は、英語の新聞を読んでいる。国際紛争に関する長い記事(というか、英語の新聞記事の長さは日本語のそれよりもたいてい長い)。女性はマスクを着けており、やがて記事に飽きたのか、眠ってしまった。左上に立っていた男性は『DAYS JAPAN』を読んでいる。
 僕は日本語の文庫本をぱらぱらと読みながら、「世界は分断されているのではないか」と思ってしまう。僕には、インフルエンザよりも、そのことのほうが怖い。僕はあわてて文庫本をしまい、WHOのレポート(英文)を出して読んでみるが、そんなことで属する世界を変えられるわけではない。
 そんな話をこれからしに行く。09.5.27