タミフル耐性インフルエンザ

 ちょっとあいだが開いてしまいましたね。いろいろとコメントしたいことがあるのですが……。

〔略〕府立公衆衛生研究所は、5月29日にタミフルの予防投与を受けていた大阪府内の女性が発症したことで、タミフル耐性を疑った。ウイルスの遺伝子を調べ、6月18日にタミフル耐性を示す遺伝子変異が確認された。しかし、7月2日深夜に記者会見するまで公表していなかった。〔略〕(無署名(朝日新聞)「「タミフル耐性」論文を優先 大阪府、2週間公表せず」、『朝日新聞』2009年7月5日3時0分)

http://www.asahi.com/special/09015/OSK200907040208.html

 僕はタミフル耐性のウイルス株が発生するのは時間の問題だと思っていて、デンマークに引き続き、大阪でもそれが確認されたわけですが、その過程で、ちょっとつまらないことが起きてしまったということです。
 もちろんこの2週間の遅れによって、とくに大きな実害は出なかったと思います。タミフルが効かない場合でも、リレンザが効くようですし。しかし、病気の種類や患者の条件によっては、第1選択が功を奏さなかったときに実施される第2選択において、アクセス性や安全性の問題が生じることもあるでしょう。その場合、第1選択の有効性についての情報には過敏にならざるを得ません。科学もまた公共性が問われてしかるべきものでしょう。
 今回の新型インフルエンザ流行では、3月24日以来、WHOを含む各国の専門家らは驚くほどのスピードで大量の情報を集め、短時間で分析し、それを報告書や論文のかたちで発表し続けました。僕は彼らの姿勢を基本的には尊敬しています。この1件はそのなかの小さな汚点ですが、汚点として終わらせずに未来のための教訓としてほしいものです。
 それとは別に……実験や調査の結果が論文発表云々とはまったく違う理由----特許、軍事 etc.----で公表が遅れたり、そもそも公表がなされなかったりすることもあるようです。それはそれで大きな問題で、解決はさらに困難でしょう。09.7.6