医療費あれこれ
マスコミ各社は、厚労省の集計で、医療費が過去最高になっていることを伝えています。
厚生労働省は１７日、２００８年度の「医療費の動向」を発表した。国民健康保険などの医療保険と公費負担医療の対象となる概算医療費の総額は、前年度比６２００億円増の３４兆１０００億円となり、６年連続で過去最高を更新した。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090718-OYT8T00291.htm
ただ、前年度からの増加率は１・９％で、０７年度（３・１％増）より鈍化した。厚労省は、医療費の抑制を目的に行われた０８年度の診療報酬改定（マイナス０・８２％）による影響とみている。〔略〕（無署名（読売新聞）「医療費が過去最高の３４兆円…６年連続更新」、『読売新聞』2009年7月18日）
高齢化が進めば、医療費が増えるのは当然のような気がします。日本人は長寿なのです。それが何かいけないことでしょうか。
こういう記事を読むと、増え続ける医療費が国の財政を圧迫している、というイメージを受けるかも知れません。実際、この国の医療費抑制政策はそのような主張のもとで進められてきました。各紙は、医療費の前年度からの増加率が「鈍化」したことも伝えています。
GDPに占める医療費を国ごとに調べて比較してみると、日本はOECD加盟国30カ国中、21位です。１位はアメリカで、16パーセント。日本はわずか8.1パーセントで、「福祉国家」と呼ばれている北欧の国々のほとんどよりも低いのです。
OECD諸国の医療費対GDP比
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1890.html
日本の総医療費 ３０カ国中２１位
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-18/2009071804_02_1.html
つまり日本は医療にそれほどお金をかけていないのです。その割には、日本人の平均寿命が世界一であることもよく知られています。いまのところは。しかし医療費抑制政策を続けていくと、どうなるでしょうかね。もっと医療費をかけてもいいのでは、せめて北欧諸国並みに、と僕は思います。
その一方、東京都日ノ出町に続き、石川県川北町が日本で２番目に高齢者の医療費を原則無料とする方針を決めました。
川北町は来年１月から、後期高齢者（７５歳以上）の医療費の自己負担分（原則１割）を全額助成することを決めた。開会中の臨時町議会に、助成費用などを盛り込んだ今年度一般会計補正予算案と医療費助成に関する条例改正案を提出している。１４日に可決される見通しで、６５〜７４歳の障害者も含めた被保険者の医療費が実質無料となる。厚生労働省によると、後期高齢者の医療費無料化は、東京都日の出町に続き全国２例目。〔略〕（無署名（読売新聞）「後期高齢者医療費無料化」、『読売新聞』2009年7月14日）
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ishikawa/news/20090714-OYT8T00141.htm
出典を忘れてしまったのですが、医療費を無料にすることで、体調に異変を感じた人が早めに受診しやすくなれば、こじらせることも少なくなり、結局のところ、医療費は少なくなる、という試算もあったように思います（要確認）。
ちなみに15歳以下の子どもの医療費無料化も、僕の故郷も含めて、複数の市町村で導入されています。
だいたい税金、保険料、窓口と３回もカネを取られるのは、あまりに高負担です。先進国では、窓口負担がゼロという国は少なくありません（もちろん、待ち時間が長いなど、各国それぞれ問題を抱えているようですが）。医療費の自己負担無料化は当然の流れでしょう。
与党も自己負担軽減の方針を取る模様です。
自民、公明両党は１７日の与党政策責任者会議で、医療費の自己負担限度額を軽減するため、高額療養費制度などのあり方を見直すことで正式に合意した。〔略〕（無署名（読売新聞）「医療費の自己負担軽減へ制度見直し…自公合意」、『読売新聞』2009年4月18日）
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090418-OYT8T00244.htm?from=nwlb
悪名高いアメリカの医療も、ようやく改革されるようですし。
「今回逃せば、数十年機会ない」＝医療改革法案への支持訴え−米大統領
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009071800280
これまでのアメリカは論外としても、増え続ける医療費が国を滅ぼす（いわゆる医療費亡国論）、ゆえに医療費の自己負担を増やさなければならない、なんていう考え方は、幻想にすぎないでしょう。09.7.18
