『海角七号 君想う、国境の南』など

 東銀座の松竹試写室で『海角七号 君想う、国境の南』(試写)を観る。
 僕はもともと台湾映画との相性がよく、そのうえ“多言語映画”、つまりさまざまな言語が飛び交う作品に弱い。この作品は、台湾では国民的な歴史的な大ヒットになったものらしい。そうした前評判を聞くと、ちょっとした短所も気になってしまい、辛い評価をしたくなることもあるのだが、そんなことはなく、かなり楽しめたといっていいだろう。言語は、少なくとも台湾語、北京語、日本語、英語が使われていた(といっても僕には台湾語と北京語の区別はできないが)。台湾の現住民族のキャラクターも登場したので、その言葉も使われていたかもしれない。テーマも多彩で、恋愛、音楽、歴史、コメディの要素が混在していて、それらが散漫にならず相乗効果となっていい味を出していた。
 急に結成したバンドが短時間でライブの準備をする、というあらすじからは、『リンダリンダリンダ』を思い出した(僕にとってはペ・ドゥナよりも湯川潮音を知ることができたという意味で収穫だった作品)。『リンダリンダリンダ』が、乾いた日本的リアリズムだとしたら、『海角七号』は、しとやかな台湾的ファンタジー、といったところだろうか。こうした“しとやかさ”を持つ作品は、韓国、中国、台湾からは次々と生まれているが、日本人にはもうつくれないものかもしれない。
 中孝介が本人役で出演していたことには笑ったけど、彼の台詞が棒読みだったのが少し残念。あれだけ情緒豊かに歌えるんだから、もう何テイクか撮れば演技もよくなったのでは……とも思ったのだが、そんなに気になるほとでもない。
 秀逸。
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 例の件がひと区切りついたので、本ブログ、少し意識して更新していきたいと思います。
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 感想を書くタイミングを失っていたのだが、少し前に東銀座にある別の試写室で、『黄金花-秘すれば花、死すれば蝶』という映画(試写)を観た。こちらは日本最高齢の映画監督----というか日本を代表する美術監督----による作品で、どことなく黒澤の晩期を彷彿とさせる雰囲気をかもしだしていた。あがた森魚の登場には笑った。この人、まめに映画に出ているねえ。あがたの「赤色エレジー」って、同じ監督が美術を担当した『けんかえれじい』にインスパイアされたんじゃなかったかな。違ったっけ? 09.11.17