デコード・ジェネティクス社破産

 数日前のニュースですが、アイスランドのデコード・ジェネティクス社が破産を申請しました。以下、『ニューサイエンティスト』のブログ『ショート・シャープ・サイエンス』より。原文には関連情報へのリンクが多数あります。

2009年11月17日 アイスランドの遺伝子神話、破産に終わる
2009.11.17: Icelandic gene saga ends in bankruptcy


アンディ・コグラン、レポーター
Andy Coghlan, reporter


 アイスランド人の健康記録とDNAを分析することで遺伝子と疾患とのあいだのつながりを発見するために13年前に設立された、先駆的アイスランド企業が、今週、破産申請した。
 レイキャビク本社のデコード・ジェネティクスdeCODE Genetics社は、骨粗鬆症を含む疾患につながる遺伝子を発見した。しかしその個人向けDNA検査サービスは、同社を維持するために充分な収益をもたらすことに失敗した。
 近年、ある人の疾患リスクを予測することを目的とした、個人化された遺伝子プロフィールの科学的正確さは、苦難に見舞われており、個別化されたDNAリスク・プロフィールの結果の信頼性を揺るがせている。ある『ニューサイエンティスト』のレポーターがデコード・ジェネティックス社に、自分のDNAプロフィールをつくらせようとしたとき、あるエラーが、そのDNAがヒトであるかどうかをめぐる疑問を導いた。
 しかしデコードは、最初のヒトゲノムの配列決定が医療における革命を約束したときには、遺伝と疾患とのあいだのつながりを解く試みの最前線にいた。
 ブログ「ジェネティック・フューチャー」が、この財政的失墜についてさらに述べている。破産の結果における遺伝的データに起こることについても。(粥川準二仮訳)

http://www.newscientist.com/blogs/shortsharpscience/2009/11/icelandic-gene-saga-ends-in-ba.html

 以下、『サイエンス』のブログ『サイエンス・インサイダー』より。

2009年11月17日
November 17, 2009
デコード・ジェネティクス社、破産を申請
deCODE genetics Files for Bankruptcy


ジョスリン・カイザー
by Jocelyn Kaiser


 ゲノミクス企業デコード・ジェネティクス社は今日、連邦破産法第11章〔訳注:日本でいう民事再生法〕を申請した。しかしこのことは、同社が消えることを意味しない。同社は、どの資産を買うと申し出た投資会社からの融資で操業し続けるだろう。
 1996年に設立されて以来、アイスランド市民の遺伝学的データを集めて、疾患マーカーを掘り当てるという新しい----そして論争的な----道筋を築いてきた。同社は多くの論文を公表してきたが、それらは一度も利益とならなかった。この1年間、同社は再編成してきて、その構成要素の一部の買い手を探してきた。現在、デコード社はアメリカで連邦破産法第11章を申請しており、その創薬プログラムやアイスランド支社「イスレンスク・アフダグレニングIslensk Erfdagreining」については、「サーガ・インベストメントSaga Investments」と呼ばれる会社からの申し出を受けている。「イスレンスク・アフダグレニング」は、同社の研究および遺伝子検査サービスを運営している。
 デコード社は、その破産過程のあいだサーガ社からの融資で操業を続けるだろう----法廷がその取引を認めなければならないし、ほかの会社が競りを申し出ることもできる、と同社のプレスリリースは述べている。「ジェネティック・フューチャーGenetic Future」というブログによれば、デコード社は顧客たちに、その遺伝子型決定サービスは続くこと、同社は2年分の資金を持っていることを知らせている、と言う。しかしこの破産申請は、投資家たちには悪いニュースである。「デコード社の株主にとってはどんな回復もほぼありえません」とプレスリリースは述べている。
 数カ月前、「ウェルカム・トラストWellcome Trust」が、同社のバイオバンクを引き受けるだろう、という噂が流れた。アイスランドにおける、デコード社のアカデミックな副産物をサポートすることによって。しかしウェルカム・トラスト当局はいまのところ、そのような取引はなされていない、と『サイエンス・インサイダー』に話した。(粥川準二仮訳)

http://blogs.sciencemag.org/scienceinsider/2009/11/decode-genetics.html