追伸----ダウン症と出生前診断について

12月6日のエントリー「ダウン症と出生前診断」には、思いのほか静かな反響があったようだ。
2つ紹介した記事のうち、2番目のものでは、ダウン症候群の専門家ブライアン・スコトコが以下のようにコメントしていた。

スコトコによる世界中の研究の再検討によると、ダウン症であるという出生前診断を受け取った女性の92パーセントがその妊娠を終わらせることを選ぶ、という。

http://abcnews.go.com/Health/w_ParentingResource/syndrome-cases-rise-women-delay-childbirth/story?id=9216796

スコトコ自身、多くの調査を実施しているようだが、「新しい出生前診断によって、ダウン症の赤ちゃんは消えゆくのか?」と題するレビュー論文では、上記の件について、以下のように記述している。

アメリカやイギリス、ニュージーランド、フランス、シンガポールのデータを集めたメタ分析では、ダウン症という最終的な出生前診断を受け取った女性の92パーセントは、その妊娠を終わらせることを選ぶ。

http://www.brianskotko.com/images/stories/Files/adcskotkofinalarticle.pdf

この情報源は彼自身の研究ではなく、イギリスの研究者らが5つの障害(ダウン症、二分脊椎、無脳症ターナー症候群、クラインフェルター症候群)を対象に、出生前診断の後の「中絶率termination rates」を比較した論文である。
そのアブストラクト(要約)には、

中絶率は病態によって異なる。中絶率はダウン症出生前診断の後で最も高く(92パーセント;信頼区間:91〜93パーセント)、クラインフェルター症候群の診断の後で最も低かった(58パーセント;信頼区間:50〜66パーセント)。比較をしてみたところ、中絶率は、1990年代のあいだ、1980年代と比較して同様だった。

http://www3.interscience.wiley.com/journal/65500197/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0

と書かれている。
この論文が発表されたのは1999年。つまり10年前のデータである。
とすると、2000年代はどうなのだろう、という素朴な疑問がわいてくる。たぶん想像通りだろう。
この件については、調べれば調べるほど、気がめいってくる。専門家はたぶん知っているのだろうが、一般にはあまり知られておらず、かといって専門家だけが知っていればいいわけではない----と少なくとも僕はそう考える----事実も、それなりにあるようだ。その扱いは慎重にならざるを得ず、マスコミがあまり取り上げないことについても、その気持ちはわからないでもない。しかし……。09.12.13