テキストへのアクセス----サリンジャー、フーコー、ファーガソン
朝、サリンジャーの訃報を読む。僕も多くの人と同じように若い頃、サリンジャーを読んでたいへんな感銘を受け、ハマったと言っていいほどなのだが、『ライ麦畑』よりも、短編集『ナイン・ストーリーズ』をはじめとする一連の“グラース家もの”のほうが印象に残っている。僕は映画でも小説でもマンガでも、作品としてはそれぞれ独立しているのにその世界は実はつながっている----いわゆる“スター・システム”でそれがわかることが多い----というスタイルの作品群が大好きなのだが、“グラース家もの”もそれ。
夕方までいつもの編集部で仕事をし、ひと区切り付けてひさしぶりにガッコへ。
2月10日の例の件について、事務室前の掲示板に告知されていたのだが、貼り紙の位置が「緊急呼び出し」だった(笑)。オレ、緊急呼び出しされているのか? 気分的にはそうかも。
指導教官のゼミでフーコーの講義録『生政治の誕生』(筑摩書房)を読む。しばらく出席していなかったので、全然ついていけなかった(苦笑)。フーコーはこの巻の最後、すなわちこの年最後の講義で、アダム・ファーガソンの『市民社会論』を取り上げる。もちろん僕は名前しか知らないが、レジュメ担当者は、戦後すぐに出版された邦訳(仮名も漢字も旧字)を図書館で借りたらしく、引用箇所のコピーを配付してくれた。準備不足の僕にはありがたい。それらを読む限りでは、ファーガソンは直接的に「権力」を論じているわけではないが、フーコーはさりげなくそこに「権力」を読み込んでいる……ということがゼミでは話題になった。このゼミも今回が今年の最後。出席してよかった。
有名な思想家のテキストは、著者が死亡して50年以上経ったものは、たいていネットにあがっているが、ファーガソンはどうだろう。
あがっていますね。
An Essay on the History of Civil Society, Eighth Edition by Adam Ferguson
http://www.gutenberg.org/etext/8646
ひと昔前には、人文系研究においては、その基礎となるテキストへのアクセスのしやすさが研究の深度に少なからず影響しただろうと想像するが、その壁は少しずつ低くなりつつある。しかしながらテキストにアクセスしやすくなっても、そのためのインフラがあっても、使いこなせるかどうかは個々の研究者次第だろう。当たり前といえば当たり前だが。
フーコーのテキストがネットに上がるまでにはもうしばらくかかる。
サリンジャーも死んだばかりなので、そのテキストがネットに上がるまでにはしばらくかかるだろう。しかしながら本人が死んだことにより、作品は映画化しやすくなったはず。楽しみといえば楽しみなのだが、同時にもちろん、嫌な予感もしないわけではない。10.1.29
- 作者: サリンジャー,野崎孝
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ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生 (コレージュ・ド・フランス講義1978-79)
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