「国民皆保険」という理想

 健康保険の収納率が過去最低になったとのこと。

 厚生労働省が2日に公表した国民健康保険国保)の08年度財政状況速報によると、全国平均の保険料収納率は07年度を2.14ポイント下回る88.35%で、国民皆保険制度が始まった1961年以来、初めて90%を割り込んだ。収納率は徴収すべき保険料に占める実際の収納額の割合で、下落は4年ぶり。08年4月に後期高齢者医療制度が導入され収納率が高い75歳以上の人が抜けたことに加え、「景気悪化の影響もあったとみられる」(同省国民健康保険課)。〔後略〕(佐藤丈一「国保保険料:08年度収納率は88% 過去最低」『毎日jp』2010年2月2日 19時10分)

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100203k0000m010028000c.html

「え、“無保険”の人が12パーセントもいるの!?」と一瞬思ってしまったが、もちろん違う。
 一般紙の情報量は似たようなものだが、さすがに専門紙『CBニュース』は詳しく伝えている。

〔略〕保険料(税)の滞納世帯数は、09年6月1日現在で445万4000世帯(前年同月比2万9000 世帯減)。市町村国保の全世帯に占める滞納世帯の割合は20.8%で、データがそろっている1998年以降、最も高かった。厚労省は、分母となる全世帯数の減少(同27万8000世帯減)などが要因とみている。〔略〕08年度分の保険料を滞納している被保険者数は09年6月1日現在28万人で、全被保険者数に占める割合は2.08%だった。(無署名『医療介護CB(キャリアブレイン)ニュース』2010/02/02 20:43)

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26172.html

「全被保険者数」というのは「全国民」ではありませんが、保険料を納めらえない人が2パーセント、28万人にいるということを、「多い」とみなすべきか「少ない」とみなすべきか、微妙ですね。幸いなことに2パーセントで済んでいると考えるべきなのかもしれません。確かにアメリカに比べれば少ないはず。しかし、保険料を納められないことが「受診抑制」やさらには「国保死亡事例」につながると考えれば、放っておいていい数字でもないでしょう。
 ただし、「国民皆保険」という理想を捨てるつもりがないならば、ですが。
 僕はこれまでに、医療者を含む少なくない人が、すべての人が等しく医療を受けられられることを「理想」もしくは「当然」だと考えておらず、まるで皆保険制度を否定するような意見を口走るのを聞いたことがあります。どんな意見を持つのも自由なのですが、少し残念に思います。特に医療者の口からそういう見解を聞いたときには、ぞっとしたことをよく覚えています。そういう人は「28万人? 死ねばいいんじゃない?」と思うんでしょうね、きっと……。10.2.3