訃報、toe

 昼間、編集者からのメールで、別冊宝島を創刊した石井慎二氏が亡くなったことを知る。
 僕と同世代かその前後の人だったら、世界や社会のことは別冊宝島で学んだ、と言える人は多いだろう。僕自身、サブカルから現代思想まで、ありとあらゆることを別冊宝島を通じて知ったといっても過言ではない。そして重要なことは、今日、書店にあふれる「ムック」----雑誌と単行本の中間形態、とくにA5サイズのもの----と呼ばれるものの原型は、間違いなく別冊宝島だということだ。
 僕は、自分の記憶が正しければ、一度だけ石井氏に会ったことがある。僕があるNPOの仕事を一時的に手伝っていたとき、石井氏が別冊宝島の予備取材のためにそこを訪れてきたのだ。僕はそのとき、石井氏といっしょにやってきた同社の編集者S氏と知り合い、生まれて初めて「ルポタージュ」を書く機会を得た。僕は遺伝子組み換え食品に続き、環境ホルモンについて、臓器移植について、再生医療について、バイオハザードについて、立花隆について、別冊宝島で書くことになる。そして宝島社新書で、初めての単著を出した。担当者はもちろんS氏である。
 つまり僕は別冊宝島を読み、書くことで育ってきたのだ。
 石井氏の死は、1つの時代の終わりを告げたのだろうか? たぶん違う。石井氏の功績はいまも多くの出版業界人に恩恵をもたらしている。
 石井氏のご冥福をお祈りします。
 
 夜、渋谷のO-EASTへ。toeのライブ「“For Long Tomorrow”release tour 2010」を聴く。toeのライブはこれまで何度か経験しているが、ワンマンのものは初めて。フルアルバム2枚、ミニアルバム2枚を出していれば、ワンマンをこなすだけのレパートリーは十分にあるだろう。あいかわらずオーディエンスの平均年齢は若い。僕は浮いていたはずだ。
「For Long Tomorrow」の収録曲はどれもかなり音数が多く、重ね録りと加工が入念に施されているので、前回のライブでメンバーが言っていたように、ライブで再現するのは結構難しいはずだ。その課題は予想通りの方法でクリアされていた。つまり数多くのサポートメンバー、というか、ゲストの参加があったのだ。いつものキーボード氏のほか、曲によって、パーカッション(ある曲では2人!)とホーンセクション(トランペット1人、サックス2人)が加わった。原田郁子の声は音源で使われていた。そしてボーカルが2人。僕としては原田郁子土岐麻子がゲスト出演してくれるとうれしいと思っていたのだが、アンコールの「グッバイ」で土岐麻子が登場! ある程度は予想していたとはいえ、素晴らしい瞬間に立ち会えたと思う。なお「Foe Long Tomorrow」の収録曲がゲストのサポートによって再現されたこともよかったのだが、「Leave word」のようなオリジナル・メンバーのみでレコーディングされた曲が、ゲストのサポートで生まれ変わったように演奏されたことも特筆すべきだろう。
 ノイズが鳴り続けるギターを置いたままステージを去る、という演出は、確かモグワイもやっていた。ポストロックでは定番なのだろうか。

 出版物も音楽も、先駆者がいなければ新しい潮流は生まれない。新しい潮流をつくり出すことは、古い潮流に流されることよりも、ずっと難しく、そして偉大なことである。10.2.16


追伸;
 某SNS内で、ある方がセットリストをアップしていた。僕の記憶よりは正しいだろう。

SE.ここには何もかもがあるし、何もかもがない
1.ショウシツ点よ笛
2.everything means nothing
3.孤独の発明
4.i dance alone
5.エソテリック
6.Say It Ain’t So feat. Hoshikawa Yuzuru/ Dry River String
7.Two Moons
8.You Go
9.ラストナイト album ver.
10.1/21
11.モスキートンはもう聞こえない#1
12.モスキートンはもう聞こえない#2
13.After Image
14.velvet blanc
15.tremolo + delay
16.Our Next Movement
17.leave word
18.i do still wrong
19.past and language

en1
20.グッドバイ album ver. feat. Toki Asako
21.New sentimentality
22.Long Tomorrow

en2
23.path