モンスターvsモンスター?

 更新が滞って恐縮です。

 日本医師会が「高度情報化社会における生命倫理」という報告書をまとめ、それを『読売新聞』が「ネットで医師暴走、医療被害者に暴言・中傷」という見出しで伝えました。

医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。
 状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告書をまとめた。(無署名「ネットで医師暴走、医療被害者に暴言・中傷」、『読売新聞』2010年3月6日18時16分)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100306-OYT1T00532.htm

 この記事が伝える限りでは、きわめて真っ当な勧告だと思います。
 数年前から、無理な要求を医療者に突きつける、いわゆる「モンスター・ペイシェント」が話題になり、その一方で、医師による匿名ブログなどがそうしたモンスター・ペイシェントを批判するのみならず、医療事故の被害者やその家族、支援者などまで「医療崩壊の原因!」と誹謗中傷する現象が目立ち始めました。
 栗岡幹英先生など、そうした匿名医師らの態度を戒める人もいます。ちなみにこの記事では、大野病院事件(事故)について

冷静な検証を求める発言をした金沢大医学部の講師は、2ちゃんねる掲示板で「日本の全(すべ)ての医師の敵。日本中の医師からリンチを浴びながら生きて行くだろう。命を大事にしろよ」と脅迫され

 た、とありますが、誰のことかだいたい想像つきます。
 日医の報告書は、栗岡先生や「金沢大医学部の講師」とおおむね同じ方向の見解を述べているのでしょう。
 冷静に考えて、医師と患者とでは、どちらが強い権力を持っているでしょうか。歴史的に見て、「モンスター・ペイシェント」と「モンスター・ドクター」、どちらが多いでしょうか。
 たとえば僕の経験でいえば、症状が長びき、痛みの原因が「炎症」ではない可能性が高いにもかかわらず、消炎鎮痛剤を出し続けたドクターは、モンスターではないのでしょうか。それとも「この痛みは炎症ではないと思います。消炎鎮痛剤ではなく、オピオイドを出してください」といわなった僕がモンスターなのでしょうか。まさか、です。10.3.7


追伸;
 別の記事のなかで、栗岡先生がコメントしていました。残念ながら、日本の医学会には「犠牲者非難イデオロギー」が色濃く存在するということなのでしょう。


「クレーマー」…医療事故遺族をネットで中傷
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20081212nt14.htm