研究会/別世界のalien

 研究会というものに足が遠のいて久しいのだが、ここ最近は意識して足を運ぶようにしている。
 忘れないうちに簡単にメモしておこう。


 14日。「科学言説研究プロジェクト第7回公開研究会「SF研究の新たな地平」」。
 http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwf1019/
 前半、在日フランス人研究者が木城ゆきとのマンガ『銃夢』を分析した発表が秀逸。とくに記号論を駆使したキャラクター解読には目から鱗。もちろん、後半の著名なSF評論家の発表も、SFファンとしては面白くなかったわけがない。
 16日。「医療技術とジェンダー研究会」。
 オランダ在住インド人研究者が、インドにおける生殖ツーリズム、とくに代理懐胎ビジネスについて話すのを聞く。発表原稿の参考文献を観ると、僕の博士論文と重複している。卵子の売買においてはつねにその由来者の条件が問われるのに、代理母はそうではない、という指摘に納得。
 18日。「東京財団 公開研究会(生命倫理の土台づくりプロジェクト)」。
http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=43#01
 ぬで島次郎氏と橋爪大三郎氏がそれぞれの立場と視点から同プロジェクトを総括するのを聞く。安全性のエビデンスのないものを人に試みることこそが問題(大意)というぬで島氏の主張の核には強く同意するのだが、僕としてはもうひと言付け加えたいところ。
 20日。「第三者の関わる生殖技術について考える会立ち上げ集会」。
http://blog.canpan.info/dconception/
 とくに「取材」のつもりではなかったのだが、メディア対応の窓口があったので、いちおう名刺を置いておく。以前、ある市民運動系のシンポジウムに、ごく普通に参加したら、あの人は身分を隠して潜入した、と陰口を叩かれたことがあるので、念のため。第三者精子提供で生まれた当事者が話すのを聞いたのだが、うち1人の発表は、研究者のものといってよいほど理路整然と問題が分析されていた。こう振り返ると、「研究者」や「当事者」に対する自分の偏見に気づく。そのほか渡辺久子氏の発表で、「かぐや姫」と「桃太郎」(どちらも不妊の老夫妻が子を持つ物語!)が引き合いに出されていたのが印象に残った。
 21日。「          」
 オープンな集まりだと思って参加したら、クローズドな集まりだった。知人によるフランスの生命倫理事情についての発表が秀逸だったのはもちろんだが、もう1人の発表者によるカソリック生命倫理観についての発表内容も、なぜかこれまで知る機会が少なかったので、勉強になった。ある人からJCcastを聞いているとあいさつされてビックリ。
 27日。STS Network Japan「20周年記念シンポジウム「STS再考」」。
 http://blog.stsnj.org/2010/03/20.html
 村上陽一郎氏の基調講演は、STS科学技術社会論)について何となく知っているつもりだったが、実は無知な僕にとっては、たいへん収穫だった。とくに社会学とのかかわりを確認できたこと。パネルディスカッションの最後で、司会者にマイクをふられ、思い切り空気を読まない発言をしてしまう。激しく後悔。
 


 研究者と呼ばれる人々は、僕には別世界の人々、aliensのように見える。しかし、それぞれの場所でalienate(疎外)されていたのは、場違いなところに迷い込んでしまった僕だったのだろう。10.3.29