『BOX 袴田事件 命とは』

 京橋のテアトル試写室で『BOX 袴田事件 命とは』の試写を観る。
 冤罪事件として有名な袴田事件の再現ドラマ。犯人として死刑判決を受けた元ボクサー袴田とその一審判決を書いた熊本裁判官、双方の苦悩を描いている。冤罪の不当性や裁判院制度の危険性を訴えたいという制作者たちのメッセージはよくわかる。それには共感しなくもない。しかし映画としてはいかがなものか。たとえば、同じく冤罪をテーマにした映画『それでもボクはやっていない』と比べて、作品から受ける触発の度合いはどうか。また、警察官や検察官、熊本以外の裁判官が、あまりにうすっぺらな悪人としてしか描かれていないことも気になった。決して悪い映画ではないし、できれば多くの人に観てもらいたいのだが、この印象は……。
 会場で、週刊誌記者である古い知人とばったり再会。少しだけ喫茶店でおしゃべり。報道の現場にいる彼の姿を見て、自分がすいぶん出遅れていることを思い知らされ、苦笑。10.4.5