ニュージーランド事故補償公団編『急性腰痛と危険因子ガイド』(長谷川淳史訳、春秋社)

 前にも書いたかもしれないが、腰痛という結果を引き起こす要因というものがあるとしたら、それには骨や筋肉の損傷(生物学的因子)だけではなく、ストレスなど(社会心理的因子)も少なからず含まれる。いや、むしろ後者のほうが重要だと考えるべきだろう。腰痛は「生物学的損傷」というより「生物心理社会的症候群」なのである。世界には、腰痛診療のためのガイドラインが十数本があるらしいが、腰痛を起こす原因としての「心理社会的因子=イエローフラッグ」という概念を最初に取り入れたのは、このニュージーランドガイドラインが初めてらしい。2004年のものということで、若干古い印象があるが、歴史的に重要なものであることは間違いない。
 しかしながら、社会心理的因子を中心に見据えた腰痛診療などというものは、いまの日本の診療体系のなかで可能なのだろうか。残念ながら難しいだろう。
 

急性腰痛と危険因子ガイド

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