『ザ・ウォーカー』

 午前中、国士舘大学町田キャンパスへ。「生命科学と21世紀社会」の第10回目として、映画『GATTACA(ガタカ)』の一部を観せて、その含意を(いつものように大谷いづみさんの議論を援用して)解説する。
 昼過ぎ、御茶の水のいつもの編集部へ。夜半まで作業。
 ふらふらになって地元に戻り、シネコンで『ザ・ウォーカー』を観る。
 まだ観ていない『ザ・ロード』と同じ“終末もの”。原題は『The Book of Eli(イーライの本)』。
 終末ものといえば、古くは『マッドマックス』シリーズから、新しくは『ウォーリー』や『アイ・アム・レジェンド』まで、ずいぶん観てきたが、これもなかなかの佳作。今年に入ってから観たもののなかではかなり上位になりそう。
 宣伝されている通り、舞台は核戦争か何かが起こった後、文明が滅びた近未来。こうした舞台設定は『マッドマックス』などですでにおなじみ。デンゼル・ワシントン演じる主人公イーライは、ある本を携えてひたすら西に歩く。その本が何なのかは、最初のアクション・シーンでイーライが口にした台詞でおおむね検討がついたのだが、すぐにその通りだとわかった。その本の内容が、多くの災いを招いてきたことが示唆される。と同時に、それが人に救いをもたらすこともまた強調される。優れた映画は、現実世界の投影なのである。
 ネタバレは控えるが、レイ・ブラッドベリの『華氏451』(原作小説およびトリュフォーによる映画作品)を彷彿とさせる内容でもあった。監督や脚本家が参考にした可能性はあると思う。『華氏451』でも本が失われた世界が描かれていたが……出版不況のいま、そして本に変わるメディアが本格的に普及し始めたいま、観るべき作品かもしれない。
 ついでながらもう1つ、監督や脚本家が参考にした可能性のあるものとして、『座頭市』シリーズもあるかもしれない。これまた、あまり詳しく書くとネタバレになるので控える。10.6.27


追伸;
 監督は、『座頭市』に影響されたことを認めているようです。


映画「ザ・ウォーカーアルバート・ヒューズ監督
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100622/tnr1006221056004-n1.htm


追伸その2;
華氏451』との類似を指摘したレビューもあるようです。


'Book of Eli': The Diligent Pursuit Of The Word
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=122490436